月愛でる頃、果たして今年の秋はそのようになってくれるのであろうか。あまりにも荒々しい天候が続いたあとなので、本当に涼やかな気分が訪れるのだろうか。確かにいつもと異なる心もちでいる。そうは言っても、競馬の秋はやって来た。
ここで、我が身にひきあててこの秋を駆ける馬に思いを馳せてみたい。もし、分け隔てなく全てを包み込む気持ちがわいてきたら、競馬ファンとして本物だ。そこには慈しみの心があるから、まっすぐ競馬を見ることができる。勝ち負けにこだわるのも競馬だから、そうではいけないとは言わないが、とどのつまりのところでは、大きく全てを受け入れる立場でありたいと思っている。
目の前を疾走する馬を我が身にひきあててみれば、そのことははっきりする。自分に対する思いやりだけでなく、馬に対する思いやりの心も見えてくる筈だ。一切衆生は全てひとつの世界にあるのだから、他を慈しむ心こそ、あるべき姿ということになる。
どうだろうか、この秋はこんな大きな心を持って競馬を見ていっては。もっと楽にレースを見ることになると思うのだが。
何がいけないと言って、こだわりを持ち続けることほどつまらないことはない。あの時はこうすればよかったとか、ああすればよかったといった類は、この先の幸運をも遠ざけているようでならない。福を呼び込む雰囲気づくり、それは、こだわりのない広い心から生まれる。広い心は、全てを我が身にひきあててこそ生まれてくる。本物の競馬愛好家であるための心構えを、この秋こそ持っていきたいと、そう念じているのだ。きっと涼やかな気分になれるだろう。そして、競馬の粋人になってみせるのだ。風流風雅を好み、世の中の表裏によく通じ、物分かりがよく、なんでも心地よく受け入れ、確かにいつもと異なる心持ちだ。この変身ぶりは、いったいどこから来たのだろう。
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