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マサノウイズキッド登場

  • 2008年10月07日(火) 19時10分
 岩手のトレジャースマイル(牝3歳)がハートマーク馬として昨年話題になったと思ったら、道営ホッカイドウ競馬のマサノウイズキッド(牡2歳)がその後すぐに登場し、何かと比較されるようになった。

 岩手競馬としては、このトレジャースマイルを大々的に売り出し、何とか競馬人気回復の起爆剤にしたいと考えていたはずだが、“元祖”ハートマーク馬の方は、これまで5戦を消化したものの未だ未勝利に甘んじており、6月以降は出走もしていない。それでも、競走馬としては凡庸であっても、アイドルホースとしてアピールできればまだ存在価値がないわけではないのだが、マサノウイズキッドの出現により、どうにもやや分が悪くなってしまった感がある。

 道営のマサノウイズキッドとトレジャースマイルの決定的に異なる点は、おそらくその競走能力にあるだろう。年齢が1歳下であり、「第二の存在」でしかなかったマサノウイズキッドだが、今年6月25日の「フレッシュチャレンジ」(JRA認定競走)でデビューするといきなり2着馬に3.1秒という大差をつけて圧勝し、一気に注目されるようになった。

 以後、競走除外が一度あったものの、これまで3戦3勝。しかもいずれのレースも圧倒的な強さで他馬を退けており、徐々にその存在が全国的に知られるようになった。

 そのマサノウイズキッドが札幌競馬最終日の10月5日(日)「すずらん賞(サラ2歳OP)」に登場するとあって、先日、出かけてきた。

 この日の札幌は天候晴れ。ただ、もう10月に入っており、北国の秋は上着を着ていなければやはりちょっと寒いくらいだ。パドックとスタンドを往復していると、何人もの知った顔に出会う。札幌最終日とあって、生産馬が出走する予定の牧場関係者が大勢つめかけている。揃ってみんな背広にネクタイ姿なのが微笑ましかった。たとえ人気がなくとも「万が一」ということだってある。口取りの写真撮影には、正装がベストだ…。そんな思惑を胸に抱きながら競馬場にやってきた人が多かったはずだ。

 午後1時半くらいだっただろうか。パドックの近くで、マサノウイズキッドの生産者である道見忠信さんに会った。昨年、道見さんの牧場にはサンツェッペリンの取材で一度お邪魔したことがある。「毎年、話題を提供してくれますね」と話しかけると「いやあ、今日は何とか勝って欲しいなあ」と祈るような表情で答えてくれた。見ると、道見さん自身も背広にネクタイ姿。そして、日高町から夫人も娘さんたちも揃って応援に駆けつけていた。期待のほどが窺えた。

道見忠信氏

 「すずらん賞」には16頭が出走予定で、そのうちの半分の8頭が道営からの遠征馬である。第9レースが終わった直後から、パドックにはかなり多くのファンが集まってきた。

 ほとんど重賞並みと言っても過言ではないくらいの人だかりで、目当てはもちろんマサノウイズキッドである。やがて道営所属オヤビン(1枠1番)を先頭に出走各馬が厩務員に引かれパドックに現れた。最前列に陣取っているファンの多くがカメラを構えてマサノウイズキッドに照準を合わせる。一斉にシャッター音が鳴り響いた。

マサノウイズキッド

 初めてこの馬を見たが、額のハートマークは、トレジャースマイルよりも一回り大きいようだ。そして、ハート上部の窪みの部分がより深くはっきりしている(トレジャースマイルの窪みの部分は少し浅い)。

マサノウイズキッド

 まあここでハート型の完成度を競ってもしょうがないわけで、問題はこの馬がどんなレースをするか、初コースとなる札幌の芝がどうか、という点だけが気がかりであった。人気は高く、1番人気に支持されている。主戦の宮崎光行騎手が騎乗してからも、マサノウイズキッドは落ち着いたまま周回を重ね、出走馬は地下馬道へと消えて行った。

 2コーナーポケットが札幌芝1200mのスタート地点だ。午後2時40分、「すずらん賞」がスタートした。

 注目のマサノウイズキッドは、やや後方からの追走となった。向こう正面から3コーナーにかけて、マサノウイズキッドはそれでも外を捲り気味に追い上げて行く。そして4コーナーを回った時にはかなり上位集団に近いところまで食らいついてきた。

すずらん賞直線

 直線では一瞬見せ場があった。しかし、道中、やや脚を使っていたせいか伸びがなく、残り100mを切ったあたりでコリコパット、カイテキプリンなどの中央勢にも交わされ、残念ながら5着に敗退した。

ゴール前

 勝ったのはルシュクル(父サクラバクシンオー、牝芦毛、中央・中竹厩舎)、クビ差2着は前走で札幌芝1200mの平場を勝っているイナズマアマリリス(父スエヒロコマンダー、牝鹿毛、道営・角川厩舎)が入った。勝ち馬から5着マサノウイズキッドまでは0.2秒と差がなく、もうちょっと距離が長い方がより力量を発揮できたような気もする。なお上がり3Fのタイムはメンバー中最速の36.3秒だった。コース取りのロスがやや悔やまれる。

 いずれにしても、まだ見限れない馬で、次走の捲土重来を期待したいと思う。

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岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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