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血統と馬体と適性の関係 その3

  • 2008年10月27日(月) 16時30分
 今年の菊花賞はオウケンブルースリが制しました。

 私自身、この馬はあまり評価していなかったのですが、あの完成度の低さで勝たれると、先の底知れなさを感じます。この馬の良いところは、とにかく体が柔らかいことです。ツナギ、筋肉などあらゆる部分がとにかく柔らかいのです。ただ、逆にこういう柔らかい馬は、完成させるのに時間が掛かります。未勝利を脱出するのに3戦を要したのも、その辺りが影響していると思います。

 しかし、この馬は先述のように完成度が低いのです。まだまだ全然体に芯が入っていませんし、筋肉も付くべきところにまだ筋肉がちゃんと付いていません。それでいて、大外を捲って押し切る強い内容ですから、先々は凄い馬になる可能性を秘めています。世代レベルの低さが嘆かれる現3歳世代ですが、ようやく古馬に通用する素材が出てきそうですね。

 さて、このオウケンブルースリはジャングルポケットの産駒ですが、馬体の形を見るとあまりジャングルポケット産駒に見えません。しかし、ジャングルポケット産駒の良い部分は確実に継いでいます。
ジャングルポケット

 ジャングルポケット産駒の良い特徴として、

・筋肉・関節が柔らかい
・状態の骨格の割に脚が細い

 ということがあります。オウケンブルースリは形こそ似ていないものの、この良い特徴は確実に受け継いでいるのです。柔軟性がある上に脚が軽くて速く動かせるので、上がりの速い馬場にも対応できますし、筋肉が柔軟な分、そのスピードを持続させることもできます。その両面が相重なって、菊花賞を「捲って押し切る」という強い勝ち方ができたのです。
オウケンブルースリ

 またオウケンブルースリは、逆にジャングルポケット産駒の弱点である、

・柔らか過ぎて造りにくい

 という部分も受け継いでいるので晩成傾向になっています。このように、種牡馬の特徴を把握して馬体を見れば、その馬の適性傾向だけ出なくて将来性などについても、かなりの高い確率で推測することができるのです。

◆血統と馬体の「パターン」を多く持とう
 字面で血統を見ていく際に、一般的には父の傾向を見ていくと思うのですが、やはりそこには母系の影響も多分に出ます。母親の形や特徴を把握しておけば一番良いのですが、それは相当の年月が掛かる作業ですし、私のように専業でずっと見てきた人間でないと不可能なことでしょう。

 そういう場合に良く用いられるのが「母父」の血統です。競走馬の特徴を見ていく際には、父と母父の特徴を把握しておけば、だいたいの場合はどちらかの影響が濃く出るようになっています。なので、母父辺りまでの世代の血統特徴(特に系統特徴)を把握しておけば、初見の馬であっても、その特徴のほとんどの部分を把握することができます。

 例えばオウケンブルースリの場合、

・ジャングルポケット(父)→柔らかい、脚が細い→軽い馬場(上がりや時計の速い馬場)が得意
・シルヴァーデピュティ(母父)→大型で骨が太めで筋肉量も多い→ダートなどの力の要る(時計の掛かる)馬場が得意

 というような特徴を理解した上で馬体を見ると、

・上体は母父の影響が出て骨格がゴツイ
・筋肉の質はジャングルポケット産駒らしく柔らかいが、同産駒にしては母父の影響が強いのかどちらかというと持久力寄り
・脚は父の影響が強く細くて軽い

 というような材料が出くるので、

「本質的には持久型だが、全体的な骨格の割に脚が軽くて速く動かせる分、そこそこ速い脚を長く使える。ただ、極限の瞬発力勝負の様なレースでは弱い」

 というように特徴を分析することができます。

 馬を見ていく上では、この血統知識は非常に重要です。知識があるからこそ応用が利くので、今後はこの「知識」という部分について多く提供していければと思っています。
(ちなみにこの「知識」は血統辞典など、種牡馬の写真を見ながら読んでいくとより理解が深まるかと思います)

【次走の激走馬】
ノアウイニング(かえで賞11着)
 腹袋が大き目のタイプでいつも余裕残しに映るが、今回は+8キロの馬体重が示すようにちょっと太かった感じ。また、レースでも無駄に控えて揉まれてしまい、持ち味のスピードを殺してしまった。距離は1400mあたりまでは保ちそうなので、次走適性のある条件に使われ、絞れてきていれば巻き返しは濃厚。人気もこれで落ちそうなので、人気妙味も十分。

ノットアローン(菊花賞18着)
 馬体重はプラス16キロだったが、全く太め感はなくスッキリとした仕上がり。付くべきところに筋肉が付いてきて、馬体は非常に良くなっていた。返し馬での折り合いもスムーズで、近走のレースでもスムーズに運べるようになっていたのに、あのレースっぷりは…。確実に走ってくるし、今回の惨敗は度外視しても良いだろう。巻き返し必至。

アンライバルド(新馬戦1着)
 以前からネオユニヴァース産駒は評価してきたが、これは相当良い。ネオユニヴァースの特徴である関節のしなやかさや、サンデー系の特徴である筋肉の収縮の速さが共によく受け継がれている。また、骨格も華奢じゃない程度に軽い理想のもの。レースで抜け出す脚も異常に早かったし、これは確実にG1で勝ち負けできるようになる馬だろう。距離もクラシックディスタンス向きだ。


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中央競馬で全レースのパドック・返し馬を徹底観察。繋(つなぎ)や蹄、体型、骨量、筋肉の量・質、関節の柔軟性や、脚元、馬具などのデータを採取。そこから競走馬の能力、適性などに加え脚質も見抜き、馬券を組み立てる。パドック派にありがちな本命予想ではなく、複勝で10倍を超えるような穴馬を見つけるのが得意。

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