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良い馬とは?

  • 2008年11月03日(月) 18時00分
 昨日の天皇賞秋は、勝ったウオッカと2着に入線したダイワスカーレットの着差がわずか2センチと、歴史に残る名勝負となりました。勝ったウオッカも強かったですが、改めてダイワスカーレットの強さを認識させられたレースでしたね。ダイワスカーレットの仕上がりは、スッキリとできてはいたものの、良い時に比べるとトモの筋肉の張りに物足りなさを感じました。この馬の形は特殊で、普通の馬よりもトモの縦面積が異常に大きいのです。

(左)ダイワスカーレットと(右)アドマイヤキッスとの比較
トモの筋肉の比較

 これが強靭な後肢の蹴りを生み出し、あれだけのスピードを出すことができるのです。

 さて、ダイワスカーレットはこの「異常なまでに面積が広く、密度の高い筋肉が張り詰めているトモ」と、「類稀な心肺能力」を武器に数々のG1タイトルを手にしてきましたが、そもそも「良い馬(速く走ることができる馬)」と言うのはどうやって判断するのでしょうか。

 よく、テレビの解説などを見ていると「バランス」という言葉が出てくると思います。確かに、馬体のバランスを見るのは大事なことですが、「バランスが良い馬」が「良い馬」だとは限りません。「バランスが良い」という言葉は、前駆と後駆の均整が取れている馬だと思いますが、解説で頻出するこの言葉に競馬ファンは惑わされるんじゃないかと思います。

 現に昨日、世紀の大接戦を演じた歴史的名牝2頭は、バランスという点で見るとあまり良いとは言えません。ダイワスカーレットは前肢よりも後肢の方が長く映る「腰高」体型ですし、ウオッカに関しては腰の角度が垂れたいわゆる斜尻の馬です。今から行われるレースで速く走ることができる馬を探すパドックにおいては、「馬体のバランスの良さ」を重視して見てもあまり意味はありません。今、この条件で速く走ることができる「武器」を持った馬を探さなければならないのです。その武器がこれから走るレース条件と噛み合えば好走することができるのです。

 全ての条件で強い馬なんていうのは存在しません。あのディープインパクトですら、ヨーロッパの芝では切れ味を削がれましたし、強いウオッカだって雨が降るといつも全く力を出せていません。今から走るレース条件に対して有効な武器は何なのかということを把握し、その武器を持った馬を探すという観点で見ていけば、そのレースの答えに近づいていくことができるでしょう。

【次走の激走馬】
ポップロック(天皇賞秋14着)
 京都大賞典のときに見た時は、馬体が硬くなっているし、張りもあまりなかったので、さすがに年齢的に終わったのかと思っていたが、今回のパドックでは一番良い時と遜色のない馬体を披露した。この馬はまだ終わっていない。次走はJC辺りだろうが、距離が延びるのは大きなプラス材料。また、雨で馬場が渋るようなら更にプラス材料なので、狙い撃ちしたいところだ。

リキサンポイント(精進湖特別1着)
 1年9ヶ月ぶりの出走だったが、大型馬の割にスッキリとできているし、何よりトモの筋肉の量と張りが目立った。レースではそこそこ揉まれたりしていたが、直線で馬群を割って力強く抜け出した。まだ絞れる余地はあったし、ここを使ったことで更に良くなるはず。重賞でも戦えるポテンシャルを持っている馬だし、先々期待できそうだ。

タマモサポート(スワンS6着)
 体型的には2000mくらいに適性のある馬だが、掛かる気性なので短めの距離は合っている。ベストはマイルだろう。今回は馬体の柔軟性が目立ち、筋肉の張りも良好で、かなりの良化が見て取れた。また、仕上がりとしてはまだ絞れる余地があった。重賞でも十分戦える能力を持っている馬だし、次走1400mからマイルくらいの距離で絞れてくれば大駆けがあっても良い。


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中央競馬で全レースのパドック・返し馬を徹底観察。繋(つなぎ)や蹄、体型、骨量、筋肉の量・質、関節の柔軟性や、脚元、馬具などのデータを採取。そこから競走馬の能力、適性などに加え脚質も見抜き、馬券を組み立てる。パドック派にありがちな本命予想ではなく、複勝で10倍を超えるような穴馬を見つけるのが得意。

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