先週日曜日の京都競馬。メインは2歳牝馬限定の「ファンタジーS」(GIII)で、道営ホッカイドウ競馬から転厩したブービー人気のイナズマアマリリスが接戦を制し1着となった。
単勝は何と74.6倍。3連単も29万4430円という高配当を記録した。勝ったイナズマアマリリスは、父スエヒロコマンダー、母イナズマラム(その父ラムタラ)という血統で新冠の(有)小泉牧場生産。馬主は小泉賢悟氏。栗東・松元茂樹厩舎。
生産者名と馬主名からお分かりのように、この馬は小泉賢悟氏のオーナーブリーディングホースである。のみならず、父スエヒロコマンダーも、その母のスエヒロジョウオーも、そして、イナズマアマリリスの母イナズマラムも、その母のイナズマクロスも、すべてこの小泉牧場で生まれた馬である。血統表に記載されている父、父の母、母、母の母までもが、「自家生産馬」で占められているのだ。社台グループならばこうしたことは珍しくないかも知れないが、日高の中小規模牧場で、これはまずかなり稀有な例であろう。
京都競馬場出張から帰宅したばかりの小泉賢悟氏(60歳)にさっそくお話を伺うべくお邪魔した。
新冠の通称「サラブレッド銀座」と呼ばれる一角に小泉牧場がある。現在、もう一か所のヒノデファーム(ここも小泉氏の経営)と合わせて繁殖牝馬18頭を擁する中規模牧場である。お祝いとして届けられたたくさんの花やお酒などが並ぶ応接間で小泉賢悟氏は「本当に嬉しかった。何とかスエヒロコマンダーを種牡馬として成功させたいと願っていたものですから、この優勝は感無量でした」とまずレースを振り返った。
イナズマアマリリスは、周知のように道営から中央に転厩したばかりで、中央所属馬としての緒戦がこのレースだった。小泉氏によれば、札幌で2度芝のレースを使って、この馬が芝にかなりの適性を持つと自信を持ったという。
「9月20日にまず札幌で2歳500万条件の平場を勝ったんですが、続いて10月5日のすずらん賞でも差のない2着に残ったので、これはイケると考え、後はいつ転厩させるかという時期的な問題だけでした」
すずらん賞は、私も札幌で観戦していた。密かに狙っていたマサノウイズキッドが5着に敗退したものの、このイナズマアマリリスが僅差の好勝負を演じたことに驚かされたのを思い出す。
とはいえ、いざ転厩させるとなると、道営の厩舎には穴が空くことになる。そこで小泉氏は何とか道営所属のまま中央遠征できないかとずいぶん頭を悩ませたらしいが、当初考えていた「福島2歳S〜阪神JF」というローテーションだとかなり厳しい日程になることが分かり、すずらん賞を使った後に移籍させることを決意したという。
それが、まさかの大金星。表情がほころんでくるのも当然である。
「私としては、何とか順調にこのまま行ってくれたら、来年のチューリップ賞から桜花賞へと駒を進めて欲しいと願っています」と小泉氏。父スエヒロコマンダーを成功させたいという一心で生産したこの馬が、さらに大きな夢に向かってまず第一関門を突破した、と言って良い。
小泉賢悟氏は馬主歴19年になる。平成になってすぐ資格を取得し、最初に持ったのが自家生産馬のイナズマクロスだ。「この馬もずいぶん走ってくれて、とても助けられた」と振り返る。以来、いたずらに流行を追うのではなく、独自の配合理論でポリシーのある生産を続けてきたのが小泉賢悟氏である。そして、その結晶がこのイナズマアマリリスだろう。
父系、母系ともに、これほど日高色の濃い血脈も今では珍しく、しかもすべて自家生産馬ばかり。この馬は、日高の生産者にとっても何よりの励みになる存在で、今後も注目し続けたいと思う。
現在、スエヒロコマンダーはシンジケートを解散しており、同じ新冠町内にある赤石久夫さんの牧場にて繋養されている。「来年の種付けシーズンまでの間にどこで種牡馬として供用するか、考えておかなければなりません」と小泉氏は語る。ともあれ、これは「嬉しい悩み」と言えるかも知れない。また母馬のイナズマラムは「同系統の繁殖牝馬が他にもいるために」他所の牧場へ移動しており、小泉牧場にはいないという。しかし、この孝行娘がいずれ繁殖牝馬として牧場に帰ってきて、母系はさらに繋がって行くはず。これは生産牧場としての理想形である。
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