スマートフォン版へ

なんでもほどほどが一番

  • 2009年02月18日(水) 00時00分
 太宰の小説の冒頭にこんなのがある。とても身に染みるのだ。

「言えば言うほど、人は私を信じてくれません。逢うひと逢うひと、みんな私を警戒いたします」と。惨めとしかいいようがありません。ところが、競馬で盛り上がっていて、ついうっかりすると、こうなってしまうことってよくあるので、油断できないのだ。

 それも、レースを検討しているときに多いから、注意しなければならない。

 競馬は記憶のスポーツでもあるから、つい覚えていることを言ってみたくなる。単にそのことをしゃべっているうちはいいのだが、目の前に出馬表があると、それだけでは済まなくなる。なんやかやとうんちくを傾けて得意になっているうち、そのレースの予想に及んでしまう。ところが、理屈を並べたからといって、当たるとは限らない。ではと、次のレース、次のレースとエスカレートしていくのだ。そこで冒頭の言葉に行き着いてしまうのである。

 その昔、かの大川慶次郎さんがよく言っていた言葉が思い出される。人から聞かれもしないのにベラベラしゃべるのが予想家で、聞かれたときにだけしゃべるのが評論家なのだと。うるさい予想家だと言われたくなかったら、少しは上品にしていなくてはならないのだ。ところが、人間は悲しい生き物で、つい目立ってみたくなる。競馬なら、レースを当てるのが手っ取り早い。聞かれてもいないのに、しゃべってしまうのだ。それに、耳に届くものにはすぐ反応してしまう。言われれば言い返すのだ。

 知らぬ間にこうなっていることがよくあるのが競馬だから、人から警戒される人間にならないよう、心しなければならない。

 なんでもほどほどが一番で、ひとこと言ったら、相手の言葉にも耳を傾けるぐらいの呼吸が肝要。競馬道は人間道にも通じるのだから、この修行はバカにならない。

毎週、3歳馬を格付け!丹下日出夫の「番付」がnetkeibaで復活!

参加無料!商品総額50万円!netkeibaPOG大会「POGダービー」が開幕!

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング