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主取り手数料1%問題

  • 2009年03月03日(火) 23時00分
浦河軽種馬生産振興会総会風景1

 日高軽種馬農業協同組合は、その名の通り軽種馬生産を生業とする日高管内の牧場で構成されており、現在組合員戸数は934戸。前年同期より31戸減少し、さらに平成11年からの10年間で400戸もの戸数が減少してきている。

 組合の主要な業務は、かつてテスコボーイやトウショウボーイなどの主力種牡馬のいた時代には種馬場経営(種付け業務)であったが、近年、組合所有の種牡馬は不振を極めており、ほぼ市場開催業務が“生命線”と言っても差し支えない。

 その市場業務は、昨年、折からの不況などの影響を受け、大きく売り上げを下げてしまった。一昨年に年間約59億円あった総売り上げが昨年は一気に10億円も減少し、49億円余となり、今後の景気動向が不透明なこともあって、組合員の間では危機感が強まっている。

浦河軽種馬生産振興会総会風景2

 そこで日高軽種馬農協は、4項目にわたる「市場改革案」を作成し、傘下の軽種馬振興会(各町ごとに組織する組合の下部団体)に出向いてその内容について説明することとなった。その項目とは次のようなものである。

 1.販売申込者の意識改革のため、主取り手数料を導入します。主取り手数料は、お台の適正化が図られることから、購買者からの第一声を誘発しやすく、活発なセリが期待できます。軽種馬市場は、海外市場は勿論、国内においても殆どの市場が主取り手数料を徴収しています。

 2.欠場馬をなくし、上場率を高めます。欠場馬にいては実馬検査を実施します。(昨年の場合)欠場馬は414頭あり、特に購買者から目当ての馬が何頭欠場していると苦情があり、市場の信頼性が問われています。

 3.レポジトリーシステムを市場業務規定に明文化します。(以下略)

 4.徴収された主取り手数料は市場振興策に利用します。(1)軽種馬緊急流通促進対策(案) (2)レポジトリーによるレントゲン写真・上部気道内視鏡動画への助成 (3)施設整備 (4)将来の補助金削減への対応 (5)その他

 2月に入り、6日の三石軽種馬生産振興会を皮切りに、9日荻伏(浦河町に属するが、浦河のみ2つの振興会に分かれている)、10日門別、12日様似、13日新冠、14日平取、18日浦河、24日静内という順にそれぞれの振興会ごとに総会が開催され、その場で日高軽種馬農協側から組合員に対し、この市場改革案についての説明が行なわれた。

 このうち、1.の主取り手数料導入に、さっそく反対の声が上がり、同時に、組合に対する多くの疑問や要望などが寄せられ、ほぼ全ての振興会で活発なやりとりとなった。

 組合側が提示した4項目のうち、4番目の(1)軽種馬緊急流通促進対策(案)は、良質馬を選抜し上場している「セレクトセール」(社団法人・日本競走馬協会主催)と日高軽種馬農協主催の「セレクションセール」を除く一般市場において購買された馬が、2歳新馬及び未勝利戦を勝ち上がった際に、中央競馬ならば40万円、地方競馬は20万円(ただし当該競走の1着賞金の額を上限とする)を1回限りで交付する、というプランである。緊急の市場振興策として組合内部でこの計画が持ち上がり、平成22年度より3か年に限って実施するべく骨子がまとめられた。

 そのための財源(これだけではないが)として、従来、徴収していなかった主取り手数料を、5月11日に予定されている「2歳トレーニングセール」と、7月21日、22日の両日に開催予定の「セレクションセール」(当歳及び1歳)において導入しようというものだ。

浦河軽種馬生産振興会総会風景3

 組合員にとっても市場振興はもちろん最大の関心事であり、昨年、大きく数字が落ち込んだ要因のひとつに、一昨年まで交付されていた馬主への「市場取引馬奨励賞」(中央競馬の場合に限る)が廃止されたことによる影響を指摘する声が強い。

 いわば、組合としては、その奨励賞に代わる報奨金を新たに設定し、再び日高の市場で馬を購買して頂く際の「目玉」としたいわけである。

 もちろん、何らかの形で振興策を考えて行かねばならない局面になっており、この計画そのものに真っ向から反対する組合員ばかりではもちろんない。財源がいよいよなくなれば、どこからか新たに資金を捻出せざるを得ず、場合によっては主取り手数料徴収案も容認するしかなくなる可能性はある。

 しかし、その前に、組合側ができることは他にないのか? というのが多くの一般組合員の偽らざる心境なのである。

 日高軽種馬農協の用意した資料によれば、昨年の場合、北海道市場開催のための事業費として4億1550万円余を計上している。また契約職員14名を含む計47名の職員の人件費として3億2686万余が充てられている。福利厚生などの費用を合わせての金額とはいえ、単純に割り算すると1人当たり約700万円近い額である。

浦河軽種馬生産振興会総会風景4

 荒木正博代表理事組合長は、厳しい組合運営の実態について何度も触れ、組合員の理解を求めたが、こうした1つずつの項目を改めて精査できるような情報開示こそがまず求められるだろう。

 異論が噴出した主取り手数料徴収案について、仄聞するところでは2月末に組合で開催された理事会において、本年度の実施を見送る修正案が話し合われたとも聞く。

 いずれにせよ、3月18日には新ひだか町静内にて、組合総代会(組合員が多いため総代制を採用している)が開催予定である。すべてはその時に決定される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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