本音を言えばこうなるのではないか、一つだけ教えてください、今度こそなんとかしたいのですと。希望を失いかけたとき、ふと言いたくなるこの言葉。競馬とつき合っていると、自分のあからさまの姿が出てくる。
ひとの目が気になってしかたがない、つい見栄を張ってみたくなる、一緒にやって来たのに友だちのことがうっとうしくなったり、勝ったふりでもしたくなったり、人間の本質があからさまになっていく、これは競馬の持っている真実と言っていいだろう。
なにもかもさらけだしてしまう競馬。しかし、だからこそ互いを慰めている競馬。ひとの生き様がこれほどはっきりする機会はそんなに多くはやってこない。
セコくて自意識過剰であっても、他ならぬ自分だってそうなのだから、見すごすのが人の道。あからさまとあからさまがぶつかり合うから、楽しいのだ。誰だって弱味を持っている。普段は隠していても、その隠していたものが出てくるから、競馬は面白い。そんな一面があったのかと、妙に親密になっていく。それが高じて、失った希望を無理やり取り戻そうとするのだ。気持をひとつにすれば、それも叶うような気がしてくるから、これまた不思議。本音を出し合い、幸運を祈る。
どこかで無理をしているなと思っても、ここは無理をしなくちゃいけないところなのだと、思い込ませていく。この元気は、間違いなく若くなくてはやってこない。そうなのだ、いつも夢を持たなくちゃ。明るく明るく、前向きに。いい大人になって、こんな思いになることなんて、滅多にあるものではない。この若さがうれしい。
すっかりその気分に浸って迎えるレース、だが、そんなにうまくいくことはない。いつもの現実が戻ってくるのだ。あの燃え上がった一瞬は、何だったのか。もう一度、本音をもらす勇気がわいてくるのか。いや、もう一度、そのふりをすればいいのだ。
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