日一日と迫る大一番。GI戦が続くこのシーズン、大目標を目前に各陣営の思いや如何に。毎年のことながら、桧舞台に送り出す側の心の内に思いが及ぶ。緊張感を持つことで、正しくレースに相対することができるといつも思っている。特に下馬評が高ければ高いほど、陣営の思いは高まってくる。その中で、明日は来たらずというクラシックレースの重みは、何年経っても変わらない。だから、同じGIと言っても、オークス、ダービーは特別なものなのだ。その特別なものにどう立ち向かってきたか。少しでもそのことを知ってもらうのが、競馬を伝えるものの責務ではないかと思う。
ギリギリの努力をしてきて、その結果は一瞬のうちに通り過ぎていく。ときには味気ないと思えるくらいなのだ。その一瞬を迎えようとするとき、「百里の道は九十里が半」という諺を思い出す。どんなに努力をしてきても、これで十分ということはない。
最後の最後まで、きっちり終えることができなければ、なんの意味も無いという、なんと残酷なことか。
「才覚の花散り、上手の手から水が漏る、善く泳ぐ者は溺る、善く騎る者は馬から堕つ、善く走る者は躓く」などと、古から言われ、成功の秘訣は心掛けはもちろんのこと、それだけではなく運がものを言うと教えられてきた。
人間の場合は、その才覚など問題外で、根気と粘り強さこそ第一なのだとも教えられてきた。どうして運を呼び込むか、そこに最後の仕上げがありそうだ。
とにかく、「早く成る者は早く破る」とも言うように、先を急ぐことはないのだ。鈍さも成功の要素、この「運鈍根」の三要素をそなえてここまで来ることができた陣営はどれか。そして、最後の最後で笑うのはどれなのか。この体に染みこんでいる諺を思い起こしながら、その瞬間を迎えるのである。
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