よもやそんなことはあるまい、あるまいけれどと、いつも思いが揺れる。その迷いがいけないとわかっているのに、その方向にずるずると流されてしまう。
そんな自分に“根拠のない自信を持て”という言葉が響く。どうすればいいのか。それは簡単だ、欲を少なくすればいいのだ。うまくいったら儲けものぐらいの気持ち、そこに救いがある。それにもうひとつ、誰にも負けない強い思い、願望、えこひいきと言ってもいいだろう、それが当然と決めつけるのだ。
ダービーは、そんな面白さを満喫できる絶好のイベントのひとつと言える。
何ごとにも有頂天になり易い性格だから、ずるずるとおかしなつきあいが続いていくのだが、競馬とのつきあいもそれに似ている。
どうにかなる、どうにかなるだろうとその日を迎え、結局はどうにもならないのくり返し。それでも、たまにやってくるうれしい瞬間、それがあるからやめられない。
さらには、集まる仲間もけっこうお調子もんばかりだから、摩訶不思議な関係が、いつまでも継続していくのだ。互いに、“根拠のない自信”を述べ合い、すっかり、その気になっていく。それが深い傷になっていくのにも気づかず。しゃべればしゃべるほど、実体から離れていくのに。
だから、レースが終えたときの狐か狸にでも化かされたような、あのぼんやりした気持ちにも、別に心が痛むこともないのである。
それは、ちょっと冷静になればどうしても普通でないぐらいのことはわかっている。何がよくなかったのかだって知っている。そういうことをすべて呑み込んで、そこにいるということなのだ。
言ってみれば、これは自分にとっての心の安全地帯なのだ。それは、子供のころによく頼りにした母親のひざの上のようなものだ。
競馬、特にダービーには、そんな心の安らぎを見出しているのでもある。
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