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正見(しょうけん)

  • 2009年06月03日(水) 10時00分
 正見(しょうけん)、正しく見ると言っても、これは仏教での話。真理に基づいた正しい考え方をということだが、私どもは自分にとって都合のいい人をいい人と言い、都合のわるい人をわるい人と評価するきらいがあることを戒めてもいる。

 自分の都合という物差し、誰にでもあるものだけに、互いに警戒しなければならない。

 その点、趣味の話になると別だ。いくら他人がいいと言っても、自分にとって駄目なものは駄目なのだ。この範疇に入る競馬が楽しいのは、とにかく好き勝手言ったって誰からも咎められることがないからとも言える。

 堂々と自分の物差しで馬を見て、それを押し通していいのだ。むしろ好き嫌いがはっきりしている方が競馬に面白く接することができる。

 こういう競馬だから、むきになって他人の見解に反論する姿は滑稽としか言いようがないのだ。誰にも確信のないことなのに、これぞ正論と迫られても困る。もっと肩の力を抜いて楽しもうと言ってあげたい。

 もっとも、競馬のなんたるかとか、そのルールはどうあるべきかとか述べるその本質に触れる事柄なら別だが、こと馬だとかレースに関する見解は、それこそ好き勝手でいいのだ。一歩外に出た世の中では許されない自分の物差しを駆使して、辛い世相に立ち向かう鋭気を養うのも、意味のあること。それに、だいたいが何をするにも他人の目を意識したり、結果を求めたりするのも世の常。それらにとらわれては本質を見失ってしまうから、他人の評価にとらわれず、伸び伸びした自分らしい生き方をしなさいと、それは分かっていても、そんなに自由にやっていけるものではない。

 競馬で自由気ままに、十二分に振る舞うことで、かえって世の中の生活に没頭する折、正見を持つことができるように思える。こんな風に、競馬の御利益を感じ取りたい。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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