大型連休となった今年の「シルバーウィーク」は、北海道各地でイベントが目白押し。ほぼ天候にも恵まれて観光地も大変な賑わいになったはずだ。
北海道の9月は暑くもなく寒くもないという過ごしやすい季節である。加えて、新鮮な農作物や海産物が出回る季節でもある。毎年、この時期に賑々しく開催されるのが、道東・別海町の「産業祭」だ。ここでは、2日間にわたり、草競馬も行われる。正式名称は「第36回馬事競技大会」という。
19日(土)。午前10時半に、初日の“平地競馬”が始まった。また例によって、浦河よりポニー乗馬少年団のポニー7頭と乗用馬1頭、合わせて8頭が遠征した。
ここは、平地とばんえいが2日間に分かれて開催される。ただし、平地競馬に関しては、昨年からみるとより出走頭数が減少している。午前9時の段階でもわずか20頭をいくらか上回る頭数に過ぎず、これで1日13レースをどうやって組むのかといささか心配になった。
結局、エントリーしてきた顔ぶれを見て、レース編成が大きく変更されるのもまた草競馬ならでは。この日はポニーが比較的多く(計8頭)、トロッターや軽種馬は少なく、和種(ドサンコ)はついにレースそのものがなくなった。
会場はとにかく広い。「産業祭」と銘打っているだけに、ここでは草競馬はあくまで“アトラクション”の一環である。メーン会場は多くの露店が建ち並び、地元産品が店頭売られている。農産物や海産物を買い求める多くの来場者が行き来する中央のイベント広場では、さまざまな芸能発表も行われ、相当な賑わいだ。
今年で40回目を数えるこの産業祭は、さながら町を挙げての一大イベントといった感がある。各農機具メーカーの展示会も一角で開催されており、日高ではちょっとお目にかかれないような大型のトラクターなどが多数展示されていた。
さて、10時半ちょうど。第1レース「トロッター速歩C」からレースが始まった。出走頭数は3頭。距離2000m。1周1000mのダートコースを2周する。中標津と比べると、埒などは格段に整備されているものの、出走頭数の少なさからか、かなり寂しい風景である。頭数が少なければ応援する観客もまた少ないわけで、すぐ隣の露店には多くの来場者が詰めかけているものの、草競馬の会場まで足を運ぶ人々はそれほど多くない。明らかに例年よりも閑散としている印象であった。
午前中に第5レースの「軽種馬」2000mまで実施し、昼休みとなる。この時点でほとんどの馬が一度出走しており、午後になると、トロッターはソルキー(馬車)を牽いての繋駕レースに出走する。
ポニーレースは当初2レースが組まれていたが、ここに来てから急遽1レース追加されて、最終14レース目に「ポニーキャンター500m」にも出走することになった。
午前の第2レースに1000mを走り、午後になってすぐに200mのスプリント戦、そして最終の500mと3回の出走。流石に人馬ともに疲れたことと思う。
ポニーを除くと、大半のレースが3頭〜4頭という出走頭数では、やはり迫力に欠ける。これまで何度も同じことを書いてきたが、草競馬愛好者の分布はかなり限られてきており、集まるメンバーはほぼ同じ顔ぶれである。馬こそ変わっているものの、騎乗者にはほとんど変化がなく、しかも高齢者が少なくない。今後の存続が懸念されるところだ。
それにしても、いったいどうしてわざわざ遠い道のりを遠征するのか? と疑問に思われる方もいるだろう。浦河から片道300kmはある。
今回は馬運車とマイクロバス、乗用車3台に分乗し、馬8頭、人間32名(幼児含む)の大移動でもあった。
「それほど魅力のある場所なのか?」と問われると、何とも返答に窮するのだが、敢えて遠征の理由を一言で表現するのならば「使命感」ということになる。要するに、ばんえいはさておき、平地競馬に関しては、おそらくこちらからの遠征組がいなければまともにレースが成立しないレベルまで頭数が減っている。
とりわけポニーに関しては、今回は地元からの参加がわずか1頭(浜中町・三田丈司君・小3)のみで、残り7頭が遠征馬で占められていた。
とはいえ、トロッターや軽種馬は、日高で行われる草競馬(浦河競馬祭)の際には、逆に道東からの遠征馬頼みでもある。中標津競馬の時にも書いた通り「お互いに支え合う」関係とでも表現する他はなく、前途はかなり厳しい。
次回は、2日目(20日)に行われた「ばんえい競馬」について書く予定でいる。
※追記 別海町にある野付ライディングファームにて繋養されていたリードホーユーがこの草競馬の前日に亡くなった。29歳。ちょうど1年前の今頃、ここを訪れて撮影したことを思い出す。骨折したため自力で起き上がれなくなり、やむなく安楽死させたという。また1頭、往年の名馬がいなくなってしまった。