人三馬七、以前よく言われた言葉です。人馬のレースに及ぼす力の割合は、馬の力が七分で騎手の腕が三分と、こう言い表してきたのです。それでも、大レースになれば、この比率も五分五分に近づくと見ていました。
今は、多くの有力騎手がフリーの時代で、昔とは事情が変わっています。所属する厩舎の馬に優先して騎乗するという事もあっても、逆に、騎手の方が騎乗馬を選択するというケースも出てきました。また、限られたごく少数の騎手に騎乗依頼が集中したり、その騎手の事情によって走るレースを決めたりするところまで来ています。
復帰した武豊騎手をめぐるレース選択のニュースを知るにつけ、人三馬七の時代は遠い昔の過去になったことを実感します。
馬のレベルがずっと高くなり、それだけ力の差も接近している時代だけに、騎手選びも激しくなりました。誰がどの馬に騎乗するかが話題の中心になり、レースだって、その影響を受けているかもしれません。
騎乗技術にもそれぞれ特徴があって、その技術と技術のぶつかり合いから、レースの流れを予知する事も出来るでしょうし、もっと突き詰めて、その心理状態を考える事も大切な要素と思うようにしています。どれだけその馬の事を知っているか、それによってどれだけ自信を持っているか。ベストの騎乗が出来るかどうかは、その点にかかっているといえるでしょう。
力の差がごくわずかとなれば、騎乗者の判断、さらには気迫までレースの行方を左右する要素になりそうです。何とかしようという強い思い、その微妙な差がはっきり勝敗を決定付けているシーン、いくらでも思い出す事が出来るでしょう。スペシャルウィークでダービーを勝った武豊騎手は、これでダービーの勝ち方が分かったと述べています。これに類する感覚をつかんでいる騎手と騎乗馬、または気力充実の騎手を徹底マークしなければ。