思いがけないこと、何が起こるか分からない、だから諦めることはないのだ。よく言ってきたし、耳にしてきた。だが、多くはどうにもならないときに出てくる言葉のように映っているのではないだろうか。とにかく、やるだけやってみようと。
また、こうも言う。努力を続けていれば、そのうち結果はついてくると。これまた、はっきりした見通しはない。目標ははっきりしていても、それが手に届くものなのか、どうしたって分からないから、こうした言葉を人間はつくり出した。
ことに立ち向かうとき、尻込みするこの心を前に引き出し、たまに成功することがあるから、余計、この言葉は受け継がれていく。
だが、よく考えてみると、この世の中、どうなるか分からないことばかりではないか。いちいち結果を気にしてばかりいたら、とてもじゃない、生きていられない。息苦しい毎日から、逃れたくなる。こんな思いの先にあるのが競馬とも言える。ここなら、思う存分、人生を体験できる。所詮、競馬であっても、いや待てよ、どこか自分の思いにしっくりくるところがあると、分かり合えるときがある。
先日のクィーンスプマンテとテイエムプリキュアの、一人旅ならぬ二人旅は、確かに度肝を抜くシーンであったが、全く予期できないことであったかと言うと、そうでもないだろう。結果はともかくも、あの形は頭のどこかに、かすかにあった。ただ、そのままゴールするとは、とてもじゃない予期できなかっただけのこと。そこに、勝負のアヤがあった。思いがけないことが起こるのが競馬であり、何が起こるかわからないのも競馬なのだが、当事者の田中博康騎手、熊沢重文騎手にしてみれば、自分のレースをしていれば、いつかは結果がついてくるという実感は持っていたはずなのだ。ただ、それがエリザベス女王杯という大舞台で発揮されるとは。すべからく、自分らしくあれと言われているようだ。