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馬体重(5)

  • 2010年07月21日(水) 18時00分
馬体重(4)からの続き

 中7週と間隔が開いていたが、8キロも馬体が絞れて好走した。

 その理由の1つはM3タイプである。アルコセニョーラはMではC系[※注1]と呼ばれる、集中力系だ(タイプは走り方や、血統によって判断される。血統別のタイプは白夜書房の血統辞典やコラム「馬券の天才かく語りき」などを見て欲しい)。集中して走るタイプは、レースに気持ちが入っていかないと走れない。非C系はどちらかというと、生命力を吐き出すことで走る。S系[※注2]は闘争心、L系[※注3]は量や体力を放出しながら走るのだ。しかし、C系は走ること自体に集中しなければ、パフォーマンスを上げられない。レースに気持ちが入っていくことが重要なので、その為の心の準備として、レース前に体を作る必要がある。この作業がおろそかになると、集中力を上げられない。もちろん、前走細かった場合など、増えた方が良いケースもあるが、本質的にはレースへの心の準備として絞れた方が良いのである。アルコセニョーラの場合は、前走6キロ増えてきた。したがって、余計に絞れた方が良いのである。

 2つめの理由は脚質だ。差し、追い込み馬の場合は、直線で他馬を抜かなければいけない。このときに、精神力を使う。したがって、馬体は絞れた方が良いのだ(外差しのL系など例外は存在するが、それはその都度説明していこう)。逆に逃げ、先行馬は生命エネルギーを噴出しながら気分良くダッシュする必要があるので、馬体重は増えていた方が一般的には良い(その為、逃げ馬のC系比率は極めて低い)。

 3つめは単純に間隔だ。中7週では休み明けとは言えない。基本的には、間隔が開けば開くほど、馬体重は増えた方が良いのだ。

 以上から、アルコセニョーラは中7週と間隔が開いていたが、8キロ絞れて6番人気2着に好走したのである。

 ちなみに、アルコセニョーラは過去に6キロ以上馬体が増えたことは8回あるが、一度も3着以内に入っていない。その中には新潟記念の1番人気5着なども含まれていて、この5着以外は、全て8着以下の惨敗である。もちろんローテーションや前走の馬体重、走り方、馬場状態(馬体増を要求する馬場)などの条件設定によっては6キロ以上増えていても好走する場合もあるだろうが、確率は低いということだ。全くの人気薄ならいざ知らず、少なくとも人気で大幅に増えたときは、期待値が低すぎる。

 条件設定というのは、例えば'08年の新潟記念では4キロ増で16番人気ながら激走した。このとき、中6週と間隔が開き、また3走前と比べればまだ2キロ減。つまり、このときの生命体としての適性馬体重値近辺だった。そして新潟の高速馬場だったことが挙げられる。新潟は広くて、単調で、摩擦がない。したがって、C要素よりL要素が求められるのだ。逆に今回は福島小回り。L要素はあまり求められない(同じ理由で、'09年の新潟記念も10キロ増ながら、人気を裏切る形ではあったが5着に好走出来たのである)。レースの要求するタイプとの関係性も影響するわけだ。これらの条件設定によって、同じ馬でも、増えた方が良い場合もあれば、減った方が良い場合もある。ただ、話がややこしくなるので、まずは基本的な増減の概念をここでは覚えておいて欲しい。

[※注1]
C(集中力)
 M3タイプのひとつで集中力を持つ馬につく。集中して多馬との相手関係の中で走ろうとする性質。レース間隔を詰めたり、馬体重を絞ったり、内枠、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は集中力を表す“Concentration(英)”の頭文字から。

[※注2]
S(闘争心)
 M3タイプの一つで、闘争心を持つ馬を表す。他馬との関係性を絶ち、自分勝手に一本調子に走りきろうという性質。Sの由来は闘争を表す“Struggle(英)”の頭文字から。

[※注3]
L(淡泊さ)
 M3タイプの一つで、淡泊さを持つ馬を表す。自分のリズムで淡々と走ろうとするタイプの馬で、延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効的。Lの由来は軽さを表す“Light(英)”の頭文字から。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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