短縮の効果の1つが、前走長い距離で体力的にタフな経験をすると、次走が短い距離だと肉体的に楽に感じるというものがある。こういった効果を生むショックを、「体力補完系ショック」とMでは呼ぶ。マラソンの高地トレーニングと同じで、前走で辛い経験をしておけば、今回は走るのが楽に感じるというわけだ。
「ダートから芝」にも同じような効果があり、ダートは芝より深く重く肉体的に重労働であることに加え、砂が飛び散って痛いという精神的問題もある。これらの厳しい経験をした馬にとって、次走に芝の軽いレースを走ることは楽に感じるわけだ。
そのため、「短縮」と「ダートから芝」のショック成功率はリンクしやすい(違う部分もあるので、リンクしないこともある。それについては機会があれば詳しく書こうと思う)。
小倉芝1200mで言えば、'05年から'10年9月5日までの競走成績で、前走が芝1200mだった馬は複勝回収率69円(比較的ブレが少ない複勝回収率で比べている)、延長だった馬は49円、短縮だった馬は88円。圧倒的に短縮が効く。では「ダートから芝」の馬はどうかというと、複勝回収率71円。芝からの延長より遙かに回収率が高く、また同距離芝1200mからの馬よりも高い数字だ。
だけど、ほとんど芝1200mと変わらないぞ?と思う人も多いだろう。
ここにはトリックがある。前走がダート1000mだった馬は複勝回収率50円しかなのだ。つまりダートからでも延長だった馬である。これが全体を押し下げている。ちなみにダート1200mからは84円、1400mからは85円、1700mからは85円。ほぼ85円近辺で、芝の短縮に肉薄し、同条件である芝1200mに対して圧倒している。
ただ、ダート1800mは39円しかない。これはダート1800mが単調な中央のコースでほとんど行われているからだ。つまり、小回り的なS質の要素が少ない。その上、1400mと違って流れも緩い。体力は補完出来ても、「S質を活かす」というダートからのショックの重要な部分があまり表現できないのだ。
ところで、この手の体力補完系ショックが効くためには、いくつかの条件がある。この夏の小倉開催の後半が、その条件を満たさなくなった馬場に変化したことを、私は気付いていた。その為、最終週では、「前走小倉芝1200mの同クラスを逃げて連対する」という、本来なら重賞などトップレベルの小倉芝1200mでは最も買ってはいけないはずの馬を敢えて本命にして、小倉2歳Sを当てたのだった。
その構造とは何なのか?それを知ることによって、ショックに対する馬場の読みはより深みを増していくことになる。
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