鼻息が荒いと言えば、強気だとか意気込みが凄いということになるが、いずれにせよ心身ともに元気であることに違いない。
これが馬の鼻息となるとどうだろうか。うまやには、昔から独特の言い方があって、これをうまや言葉と呼んでいるが、これによると馬の鼻息のことは、「あらし」と言ってきた。あまり耳にしなくなったが、少しばかり思い出してみたい。
馬の二つの鼻の穴は大人の手のこぶし大ぐらいあるから、馬の鼻息のすさまじさを「あらし」と呼ぶのもわかる。また、馬は人間と違って鼻だけで呼吸をするので、鼻息が荒いのは確か。そして、この呼吸作用が大きいということは、心臓や肺の働きもいいことになるので、これは持久力を生む力になっていく。つまりは、「あらし」の吹き方が激しいほど、その馬の状態はいいと考えたくなるのだ。これに関連してうまや言葉でこういうものがある。「良馬必ずあらし吹く」と。状態のいい馬ほど、調教、レースの後の「あらし」が強いというのだ。
もっとも、走り終わっていつまでも吹きまくるのは、どこかに異常があるのかもしれないので、どこで見極めるかの問題はあるが、とにかく「あらし」は好不調のバロメーターのひとつになるようだ。
各馬のあらしの度合いを観察するのに適したシーズンを迎えるが、あらしが白い蒸気で示されるこれからこそ、これまであまり意識しなかった「あらし」を見てみたい。沸騰するヤカンから出る蒸気を連想してみるとはっきり認識できるだろう。鼻からどれくらい吐き出されるものなのか。とにかく、よく見ること、そして比べてみること。中には1mは出ているものもあるので、よく確認してみたい。「良馬必ずあらし吹く」、このうまや言葉を是非、体感してみたいと、なんだかワクワクするではないか。持久力を生む力がなんであるか、興味がふくらむ。