競輪
JCダート
- 2010年12月06日(月) 00時00分
GI(格)のダート重賞を9つも制ししているヴァーミリアンは、8歳の暮れとあってさすがに多少の陰りは否定できない。チャンピオン格＝5歳エスポワールシチー、さらに別路線を歩む5歳スマートファルコンが不出走のここは、次代を担う新しいチャンピオン級の台頭が期待された。
上位5着までを占めたのは、ここまでの主要レースで毎回のように上位に食い込む渋いアドマイヤスバル以外、すべて若い「3〜4歳馬」だった。稍重の走りやすいコンディションに恵まれたとはいえ、勝ち時計は「1分48秒9」。阪神1800mに移ってから最速。また上位馬は、まだまだ上昇の可能性と、迫力アップを期待させるゴール前だった。残念ながら売り上げこそかんばしくなかったが、このあとに向け十分に中身のあるレースだった。
勝ったトランセンド(父ワイルドラッシュ)は、これまでの逃げ切り、先行抜け出しのレース以上に粘り強かった。レース前に、これまで2回のレコード勝ちのレース内容は、行く一手の快速馬に先導してもらったものだから、位置取りは別にしてもっとペースアップすることで自身のレースの中身を高めることが可能ではないか、と考えたが、活きのいい3歳バーディバーディが積極的なレースで接近してきたから、前半「47.9−60.0秒…」。マイペースとはいえ阪神ダート1800mにしてはかなり厳しい流れ。それでいて、直線に向き一旦バーディバーディが並びかけてきたところで「11.8」秒の再加速。スタート直後は別に、レース全体の中で最速のハロンラップを刻んで突き離してみせた。ワンペースの一本調子型に映るレース運びだが、今回のレースはこれまで以上に味があり、単なる「逃げ込み」ではない。
必ずしもダッシュ抜群ではなく、外枠を引いた際には(もともと逃げ一手でもないから)、2〜3番手追走の形になっても十分に能力全開が可能だろう。陣営は早くも「ドバイ」を展望しているが、もし、エスポワールシチーに次いでやがてアメリカ遠征でも実現したら、世界的にも楽しいニュースを提供することになる。トランセンドの4代母アイアンエイジは、もう忘れられている、遠く1950年代のアメリカを代表する快速馬「スワップス」の全妹である。
2着に追い込んできたのは、同じ4歳グロリアスノア(父プリサイスエンド)。8番人気にとどまったのは、父母両系ともにスピード色の濃い配合で距離1800mに不安が感じられたため。だが、デビュー以来最高の「526�圈廚稜和里�ら繰り出すフットワークは、これまでよりはるかにパワフルだった。オーナーの強い要請で小林慎一郎騎手とのコンビが戻ったと伝えられるが、直線に向いてガラッと空いたスペースを衝き、楽勝かとみえたトランセンドを「クビ差」まで追い詰めた。期待を上回る好騎乗だったろう。ドバイに遠征し、芝のGIにも果敢に挑戦。なんとしても可能性を引き出そうとする陣営の「人馬に対する未来展望」は、開花直前まできている。
3着アドマイヤスバルは、とりわけ今回のデキの良さは光っていた。たしかにあと一歩の詰めを欠くが、逆にまず崩れないことはファンも重々承知。11番人気でも、8番人気のグロリアスノアより複勝はずっとつかなかった。これで「12戦連続して5着以内」。この間、GIでも「2、5、3、4、3、3着」だから素晴らしい。
3歳バーディバーディ(父ブライアンズタイム)は、自力でトランセンドを負かしに出た。それで一瞬「あわや…」のシーンを作り、最後まで止まらなかったからレースの中身は濃い。ビシビシ追って自己最高の480�埖罎稜和僚邸�グロリアスノアと同様、良績のなかった1800mでの好内容だから来季の展望は明るい。
追い込み一手のシルクメビウスは、もまれる形になること必至の再内枠。そのうえ稍重馬場だから、全体の流れは速く、かつ失速する有力馬も少なかった。現時点では、差し馬とはいえ楽に追走できたうえで「切れ比べ」になる、少し緩い平均ペース向きなのだろう。
注目を集めた兄弟対決は、ちょっと残念な結果に終わってしまった。さすが、と改めて素晴らしい体つきに目を奪われるヴァーミリアンだが、自己最高の1分49秒3でカネヒキリなどと戦ったのはもう2年も前のこと。まだ衰えたとは思えないが、さすがに現在は時計の速い1800mは苦しかった。復活があれば、2000m以上のパワーのレースだろう。
一方、キングスエンブレムは、成長力が最大の長所であるスカーレットインク一族の5歳の牡馬とすると、もともとすらっと見せるシャープなタイプ。これが父ウォーエンブレム産駒の一番いいところで、だから多くの産駒は芝もOK。しかし、重量級のGIのダート巧者に育つかどうかとなると、それは今回の1番の敗因は「もまれすぎる内枠」だったが、兄とは違ってパワフルな迫力のダート巧者に変身するタイプではないのかもしれない。アリゼオのダート挑戦は果敢で大歓迎だが、出負けが敗因というより、まだ若い気性が遠征してのビッグレースや、まして砂の飛び交うダート競馬向きではないように思えた。
上位5着までを占めたのは、ここまでの主要レースで毎回のように上位に食い込む渋いアドマイヤスバル以外、すべて若い「3〜4歳馬」だった。稍重の走りやすいコンディションに恵まれたとはいえ、勝ち時計は「1分48秒9」。阪神1800mに移ってから最速。また上位馬は、まだまだ上昇の可能性と、迫力アップを期待させるゴール前だった。残念ながら売り上げこそかんばしくなかったが、このあとに向け十分に中身のあるレースだった。
勝ったトランセンド(父ワイルドラッシュ)は、これまでの逃げ切り、先行抜け出しのレース以上に粘り強かった。レース前に、これまで2回のレコード勝ちのレース内容は、行く一手の快速馬に先導してもらったものだから、位置取りは別にしてもっとペースアップすることで自身のレースの中身を高めることが可能ではないか、と考えたが、活きのいい3歳バーディバーディが積極的なレースで接近してきたから、前半「47.9−60.0秒…」。マイペースとはいえ阪神ダート1800mにしてはかなり厳しい流れ。それでいて、直線に向き一旦バーディバーディが並びかけてきたところで「11.8」秒の再加速。スタート直後は別に、レース全体の中で最速のハロンラップを刻んで突き離してみせた。ワンペースの一本調子型に映るレース運びだが、今回のレースはこれまで以上に味があり、単なる「逃げ込み」ではない。
必ずしもダッシュ抜群ではなく、外枠を引いた際には(もともと逃げ一手でもないから)、2〜3番手追走の形になっても十分に能力全開が可能だろう。陣営は早くも「ドバイ」を展望しているが、もし、エスポワールシチーに次いでやがてアメリカ遠征でも実現したら、世界的にも楽しいニュースを提供することになる。トランセンドの4代母アイアンエイジは、もう忘れられている、遠く1950年代のアメリカを代表する快速馬「スワップス」の全妹である。
2着に追い込んできたのは、同じ4歳グロリアスノア(父プリサイスエンド)。8番人気にとどまったのは、父母両系ともにスピード色の濃い配合で距離1800mに不安が感じられたため。だが、デビュー以来最高の「526�圈廚稜和里�ら繰り出すフットワークは、これまでよりはるかにパワフルだった。オーナーの強い要請で小林慎一郎騎手とのコンビが戻ったと伝えられるが、直線に向いてガラッと空いたスペースを衝き、楽勝かとみえたトランセンドを「クビ差」まで追い詰めた。期待を上回る好騎乗だったろう。ドバイに遠征し、芝のGIにも果敢に挑戦。なんとしても可能性を引き出そうとする陣営の「人馬に対する未来展望」は、開花直前まできている。
3着アドマイヤスバルは、とりわけ今回のデキの良さは光っていた。たしかにあと一歩の詰めを欠くが、逆にまず崩れないことはファンも重々承知。11番人気でも、8番人気のグロリアスノアより複勝はずっとつかなかった。これで「12戦連続して5着以内」。この間、GIでも「2、5、3、4、3、3着」だから素晴らしい。
3歳バーディバーディ(父ブライアンズタイム)は、自力でトランセンドを負かしに出た。それで一瞬「あわや…」のシーンを作り、最後まで止まらなかったからレースの中身は濃い。ビシビシ追って自己最高の480�埖罎稜和僚邸�グロリアスノアと同様、良績のなかった1800mでの好内容だから来季の展望は明るい。
追い込み一手のシルクメビウスは、もまれる形になること必至の再内枠。そのうえ稍重馬場だから、全体の流れは速く、かつ失速する有力馬も少なかった。現時点では、差し馬とはいえ楽に追走できたうえで「切れ比べ」になる、少し緩い平均ペース向きなのだろう。
注目を集めた兄弟対決は、ちょっと残念な結果に終わってしまった。さすが、と改めて素晴らしい体つきに目を奪われるヴァーミリアンだが、自己最高の1分49秒3でカネヒキリなどと戦ったのはもう2年も前のこと。まだ衰えたとは思えないが、さすがに現在は時計の速い1800mは苦しかった。復活があれば、2000m以上のパワーのレースだろう。
一方、キングスエンブレムは、成長力が最大の長所であるスカーレットインク一族の5歳の牡馬とすると、もともとすらっと見せるシャープなタイプ。これが父ウォーエンブレム産駒の一番いいところで、だから多くの産駒は芝もOK。しかし、重量級のGIのダート巧者に育つかどうかとなると、それは今回の1番の敗因は「もまれすぎる内枠」だったが、兄とは違ってパワフルな迫力のダート巧者に変身するタイプではないのかもしれない。アリゼオのダート挑戦は果敢で大歓迎だが、出負けが敗因というより、まだ若い気性が遠征してのビッグレースや、まして砂の飛び交うダート競馬向きではないように思えた。
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。
