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関東馬の栗東滞在(2)

  • 2011年01月26日(水) 18時00分
 さて、先週は1月16日の日曜京都3Rに出走したテラノチョイスを例に、関東馬の栗東滞在には負荷がかかるというところまでを解説した。

 この馬の場合、とどめを刺したのは当日の馬体重だ。

 テラノチョイスは4kg増だったのである。

 4kg増がどうかしたのか? 500kg以上ある馬が、4kg程度減ったり増えたりすることに、何か意味があるのか? と考える競馬ファンも多いだろう。

 だが、これまでこの連載を熱心に読んできた読者なら、馬体重が致命傷になることがあるというのは、すでにご存じのことだと思う。

 そう! 馬体重は太いとか、細いとか、そういう物理的な指標として使うものではないのだ(大幅な増減や、連続の馬体減、馬体増などの場合は物理的な問題が大きくなるが)。

 その馬の生命リズムを測るために使うものなのである。今、馬が走りたいのか、走りたくないのか、その走りのリズムである。

 前走は中7週開いていたので、精神的なリフレッシュを考えれば4kg増は当然だ。むしろ減っていた場合、栗東滞在の弊害が早速出たと考えられる。

 しかし、今回の場合は中3週で前回に引き続き馬体増だたのだ。これは長期滞在による精神的な飽き、ないし心身が硬直している可能性を否定できない。そのため、自ら体を作ることを放棄したという可能性がある。

 ところで、この4kg増は、Mの馬体重理論の基本から考えた場合は、それほど大きな問題ではない。

 というのも、戦績からテラノチョイスはSの強いタイプ=S系と考えられる。芝からダート短距離へのショックで、強引に前に行こうとした前走の走りから、これは自然に導かれる結論だ。

 S系は生命力の噴出によって走るので、本質的に馬体は太い方が良いというのは、以前書いた通りだ。

 また、同馬が先行馬であることもポイントだ。逃げ、先行馬は、馬群を割る必要が無く、序盤からダッシュして、生命エネルギーを使いながら走る。したがって、差し馬のようにシェイプアップする必要はあまりない。逆に減りすぎると、惰性で走るためのエネルギーそのものが枯渇してしまうのだ。

 最後に、同馬がデビュー3戦目ということも考慮に入れる必要がある。デビュー間もない頃や、「連チャン期」にあるときなど、生命が別のステージに入った状態の場合、馬体重は変動が激しくなりやすい。これは生命体が躍動しているからであり、その時期の馬体重の増減はそれほど神経質になる必要はないのだ。

 以上から、本来の馬体重論の基本なら、この4kg増は少し嫌だが、あまり気にする必要がないというのが通常の判断になる。

 しかし、今回の場合は栗東滞在であり、調教の動きには飽きや、あるいは心身の硬直を感じさせる兆候があった。その中で、中3週で再び4kg増というのは、かなり怪しくなるのだ。

 結果は1番人気に支持されるも3着。

 馬場が違うとはいえ、初ダートの前走とは1.8秒も遅い時計に終わった。明らかに前走より自身の力を出せていない。これは能力などでは説明できない現象だろう。滞在で、馬の心身ストレスが高まったという、その発露としか言いようがない。これが仮に非S系の差し馬だったら、3着などではなく、惨敗に終わったことだろう。

 実際、私は本命にしたメロートにし、対抗をテラノチョイス。しかし、ティラノチョイスは体重が4kg増ということで同馬への配分を減らして、より効率的に儲けることが出来たのである。

 このように、栗東滞在は成功するか失敗するか、どちらかに大きくぶれやすい賭けなのだ。

 そしてその賭けが大きく裏目に出たのが、阪神JFのダンスファンタジアだったのである。



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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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