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アグネスタキオン産駒(1)

  • 2011年04月06日(水) 00時00分
『ポケット版恐怖の大穴血統辞典』(競馬王新書)などで、アグネスタキオン産駒について何度か書いてきたが、この連載ではあまり触れることがなかった。そこで、アグネスタキオン産駒のM3的分析をちょっとしておこうと思う。

 アグネスタキオン産駒はMでは量系と呼ばれ、L的要素が強い。
 こういうタイプはどんな傾向にあるかと言うと、圧倒的な能力差がある相手となら安定して走るし、スムーズな競馬では強いが、その馬の極限においては揉まれ弱く、またストレスに弱い。

 それに加えて、アグネスタキオン産駒は『血統辞典』にも載っているように、疲労耐久指数が低いという物理的な問題がある。そのため、ストレスに対する弱さが、普通のL系種牡馬より加速されやすいのだ。

 例えば今週なら、大阪杯中山牝馬Sの2つの重賞に、この傾向が顕著に表れていた。

 まず大阪杯。このレースには2頭のアグネスタキオン産駒が出ていた。2番人気キャプテントゥーレと6番人気リディルである。

 キャプテントゥーレは前走の中山記念を4番人気で連対。そのため、人気を集めていた。この中山記念に関しては以前解説した通りだ。

 中山記念で、私はキャプテントゥーレを本命にしていた。休み明けでリフレッシュし、また前走の天皇賞・秋は13着惨敗後でストレスも少ない。そして単騎逃げが可能なメンバー。

 ストレスに弱いがスムーズなレースをすると強いアグネスタキオン産駒にはピッタリの条件だ。特に同じアグネスタキオン産駒で、2番人気とキャプテントゥーレより人気に支持されていたリルダヴァルに負ける可能性は少ない。

 このリルタヴァルについても以前説明したと思うが、前走、0.0秒差接戦をした後でストレスがあるところに、相手強化で蓄積疲労もあるという、L系産駒には厳しい状況。

 レースはキャプテントゥーレがスムーズに逃げたこともあり、2着に連対。逆に人気のリルタヴァルは6着に沈んだ。

 問題はここからだ。

 この中山記念の後、私は『競馬王』(リアルタイムでは携帯の毎コミ予想サイト)でやっている「予想着順」というコーナーで、次走へのキャプテントゥーレの評価を「D」という、滅多に出さない低評価にした。

 リフレッシュ状態で揉まれずにスムーズに逃げた後だ。次のレースでは少しでも厳しいシチュエーションになれば、L系はレースを嫌がって投げ出すからである。

 そこで迎えたのが大阪杯。もちろん、前走の本命から人気になってストレスも増えたのだから一気に切り捨てたいところだ。
 ただ、1つだけ問題があった。今回も楽にハナを切れそうなメンバーで、距離延長なのだ。

 Mでは「逃げ馬の距離延長」というのは評価される。逃げ馬の場合、いかに道中気分よく逃げられるかが重要なので、前走より流れが緩くなりやすい延長の方が精神的に有利だからである。
 しかも、馬場は土曜の段階では比較的前が有利。

 それでも、私は4番手に評価を下げた。いくら物理的に有利な条件でも、精神的な不利(ストレス)をはね返すにはよほど流れに恵まれないと駄目だからだ。今回、メンバー的に流れに恵まれる可能性は70%以上はあったが、「よほど」となると30%程度と判断した。そこで4番手が妥当と考えたのだった。

 レースは注文通りの単騎逃げ。しかも前半35.8秒という、高速馬場でのGIIクラスにしては遅い流れ。それでも5着に終わった。
「よほど」ではなかったからだ。

 この場合の「よほど」とは、前半が36.5秒以上かかって、なおかつ直線を迎えたときに後続を離す逃げを打てた場合だけである。

 なぜ後続を離す必要があるのか?


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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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