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逃げ馬の心理状態(2)

  • 2011年04月27日(水) 18時00分
 以前も書いたように、アグネスタキオン産駒の疲労耐久指数は低いので、好走後の連闘だと疲労の影響が出やすいのだ。別府特別では他に買いたい馬もいないレースだったので、トロンプルイユの1番人気は3番手評価としたが、いずれにせよ単勝期待値は低い。

 ただ、それでもまだ私の読みは甘かった。私は本命のジャカランダテラスの相手に、アグネスタキオン産駒のアンフィルージュを選んでいたのだ。

 前走が2着でストレスがあるが、今回は中8週。疲労がリセットされている可能性が高いと判断したのである。
 ところが3着。お陰で1点目で馬単60倍が当たるところが、押さえのフェブムービングに2着にこられて、5点目での馬単73倍的中に終わってしまったのである。

 私がアンフィルージュの方をフェブムービングより評価したのは、先ほど書いたようにアンフィルージュは2着後でストレスがあるもののレース間隔が開いていたのに対し、フェブムービングは前走3着好走後の中1週。どう考えてもフェブムービングの方がストレスはきつかったからだ。
 それでも結局、フェブムービングに敗れてしまった。

 これは以前、血統の連載で書いた「種牡馬の適距離外においては、その距離における鮮度がより重要になる」という法則に支配された結果である。
 本質的な部分でアグネスタキオン産駒に芝1200mは短い。したがって、1200mに対する生涯鮮度、ないし直近鮮度がより重要になるのだ。

 私がアンフィルージュを対抗にしたのは、まだこれがデビュー7戦目で生涯鮮度の高さもあったからだが、それでも不十分だった。

 この現象は、例えば同じように芝1200mが適距離ではないマンハッタンカフェ産駒やダンスインザダーク産駒にも、アグネスタキオン産駒ほどではないが、似た形で発生する(マンハッタンカフェ産駒とアグネスタキオン産駒の場合は、芝1400mでも似た現象が起きるので注意したい)。

 またこの手の使い減りする血統の難しさは、「激走→ストレスで凡走」という通常のサラブレッドのサイクルから外れることが多い点だ。

 例えば以前解説したように、トロンプルイユの場合、500万で短縮1200mで初連対した後に、次の1200mも2着に好走した。そして、その次のレースで2番人気で9着と惨敗したのだ(この惨敗でストレスが薄れてリセットされ、その次は3着に巻き返した)。

 あるいはこの間見たリディルの場合も、初富士Sを長期休み明けで連対後、次走の洛陽Sも2着に連対。そして続く大阪杯で8着に惨敗した。

 普通の種牡馬の仔であるなら、洛陽Sの方をストレスで凡走するはずだ。仮に洛陽Sを好走した場合は、強いストレスに抵抗できる高度な集中状態に現在あるということだから、大阪杯も好走するはずなのだ。
 だが、リディルはそのいずれでもなかった。

 蓄積疲労耐久指数の低いL系種牡馬の場合は、どちらかというと「好走→凡走→好走」というように、分かりやすい交互のリズムを刻みやすい。
 ところがアグネスタキオン産駒の場合は、1回の衝撃に対する耐久力が蓄積疲労に対する耐久力よりは高いということと、そして何より鮮度要求率が極めて高いということが、このような好走→好走→凡走というリズムを刻みやすくさせている。

 類似した形では、マンハッタンカフェ産駒の短距離にも、この現象はよく現れている。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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