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2強を撃破ヴィクトリアマイル

  • 2011年05月12日(木) 18時00分
 今週は熱き乙女たちの戦い、ヴィクトリアマイルが東京競馬場で行われます。

 注目はブエナビスタとアパパネとの対決。もちろん、僕も興味津々ですが、今回は僕の師匠である中尾正先生にご縁のある方たちが出走馬に携わっているということで、さらに楽しみな一戦となりました。

ワイルドラズベリーと島さん


 まずは先生の息子さんである中尾秀正先生の管理馬、ワイルドラズベリー。担当の島助手に普段どんな馬か聞くと、「乗っていて気持ちがいい馬ですよ。この馬は、走っているときの気分が、はっきりわかるんです。跨っていると、今楽しく走っているか、そうではないかが感じ取れます(笑)」とのこと。

 すごい! 意志の疎通が完璧ってことですよね。で、最近のベリーですが、「暖かくなってきたので、飼い葉喰いもよくなってきましたね。おかげで、体調もいいですし、落ち着いてきました」とニコニコ。

 中尾先生も、このベリーの食欲に「しっかり食べると元気がでるからね」と笑顔を見せていました。

 レースに関しては、「気難しい面は、(池添)謙一が上手い手綱さばきで競馬をしてくれるから心配ない」と余裕の表情。前々から気になっていたんですが、中尾先生は「この馬には、この騎手の手が合う」という相性を考えてコンビを選んでいるようなんですよね。

 そういう意味では、ややお転婆なベリーを任せるのに池添騎手はピッタリ。なにしろ、これまで激しい女馬を御してきた腕前の持ち主ですからね。

 先生も「牝馬限定のGI(昨年の秋華賞)では、差のないいい競馬をしているからね。チャンスは十分にあると思っているよ」と期待している様子。

「マイルは得意だし、2枚の大きな壁を切れる脚を使ってすり抜ける作戦を練っているんだ」とのことでした。ちなみに、その作戦は「内緒」とのこと。これは、真剣勝負の出るってことですよね。

 僕の経験からですが、東京マイルはどの馬も平等に力を出せるいいコース。でも、勝つためにはスピードはもちろん、スタミナも必要となるタフなコースなんです。

出走馬中でタフさを競うならレディアルバローザ。
 この馬を管理している笹田厩舎には、僕が現役時代にとってもお世話になった大先輩・松本達也元騎手が中尾厩舎解散後、助手さんとして活躍しています。今週は最終追い切りということで、跨ったのはユーイチでした。

調教後にユーイチに話しを聞くと「単走だったけど、反応がよかったね。走るごとに力をつけてきている。馬力があって、しっかりした馬だよね」と満足そう。

 また、前走の中山牝馬Sを振り返って、「返し馬の時点で、切れる脚を使ってくれそうだなって感触があったんだ。自在性もあって、どこからでも競馬ができる賢い馬なんだよね」と話してくれました。

笹田和秀調教師


 普段からかなり頭のいい優等生のようで、笹田先生も「無駄な動きはしないし、手のかからない素直な馬ですよ」とおっしゃいます。

 その話を聞いて可憐な乙女を想像しましたが、馬体は牡馬かと思うほどガッチリしているんですよ。それに、重心が下がっていてバランスの取れたきれいな馬体。おそらく、しっかり食べているから立派な体つきをしているんだろうと思って聞いてみると…。

「飼い葉喰いはいいですね。馬体が増えているのは成長している証拠です。筋肉の張りや毛づやもよくなってきましたよ。以前の調教時計は目一杯でのものでしたが、最近では馬なりでも(同じぐらいのタイムが)出せるようになりました」(笹田師)

 これは、中間でかなりの成長があったようですね。ブエナ、アパパネを脅かす存在となりそうです。先生は「待ちに待ったGIの舞台ですが、気負いはありません。狙っていきますよ!」と意気軒昂でした。

 さて、僕がズ〜っと追いかけているショウリュウムーンも、最近さらに成長した様子。

 佐々木先生は前走のマイラーズC、14着の原因を「出遅れたことと、スローペースだったことで、ちぐはぐな競馬となり力を出し切れなかった」と分析。

 敗戦の理由がわかったなら、後は鍛えるのみ…ということで、この中間では「甘えん坊なところが出ても、ダメだと言い聞かせてビッシリ稽古をさせた」と言います。

 その証拠に先週の1週前追いでは、坂路で51.5-12.2秒の好時計をマーク。先生は「馬体が充実してパワーがついてきたね。へこたれなくなってきたよ」とおっしゃいました。

 厳しい稽古にも耐え、大舞台に向けての準備は万端。「跳びの大きな馬だから雨は嫌だな〜。でも、重い馬場は大丈夫」と先生の表情は明るいものでした。

「この馬にはマイル」と、先生がこだわりを持って育て上げてきただけに、ここは巻き返しでほしいところです。

 ブエナも昨年以上のデキと陣営はコメントしていますし、関東のアパパネも状態はいい様子。2強対決ムードが高まっていますが、どの馬にもチャンスありなのが東京マイル。どんなレースが展開されるのか楽しみですね!

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1977年8月2日、大阪府生まれ。96年3月に中尾正厩舎所属でデビュー。同期に福永祐一、和田竜二らがいる。96年3月10日、タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビューからの約5か月で12勝をマーク。しかし同年8月、レース中に落馬事故を起こし意識不明に。その後、奇跡的な回復をみせて復帰。03年には中山GJでビッグテーストに騎乗しGIを制覇をする。 04年8月28日、小倉競馬場で行われた豊国JSで再び落馬。レース復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は、栗東トレセンを中心に、精力的な取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)にて『常石勝義のお馬塾』(毎週土曜日9:45〜)に出演中。

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