翌日に行われたのが邁進特別だ。
私はこのレースをジョーリゴラスにしようか、それともナイアードにしようか、かなり悩んだ。
ジョーリゴラスはかつて小回りのダート1700mを逃げて連対したことがある。直線競馬とは対照的に思われるかもしれないが、「前へ一本調子に行こうとする」という、前回解説した直線競馬で重要とされるS質な要素を、ダート1700mでも強く要求されることに変わりない。それも逃げてのものだから、テンのダッシュ力もある。
実際、デビュー戦以来実に約4年ぶりだった芝のレース、それも1200m(2010年7月25日・有明特別)で、高速時計に対応しているのだから問題ない。
また直線競馬への適性を知る上で重要な要素に、「揉まれ弱さ」がある。同馬が過去に3着以内に入った9回のうち、実に7回が13頭以下。残り2回は7、8枠の外枠だった。つまり、揉まれ弱い。これは直線競馬では大きな加点材料だ。
ナイアードは説明するまでもないだろう。初勝利がダート1000m。単調なS質を証明し、2勝目はダート1000mを逃げ切り勝ち。ダッシュ力も証明した。
さらに重要なのは、今回が2頭とも初の直線競馬だということだ。鮮度がある。
ナイアードの方が前への意識を中心に加点材料が多いが、そのぶん2番人気だったこと、2、3走前に出遅れているので、出遅れる可能性があることから、最終的には5番人気のジョーリゴラスとした。
また、先週見たように、前日は外枠有利だったこともある。
結果は、ナイアードがスタートを決めて1着。また、当日は外枠不利な馬場に変わったため、6着以内には、1頭を除くと全て一桁馬番の決着になった。そんな中、唯一二桁馬番だったのが3着のジョーリゴラスだった。
2着は1番人気のキングオブザベスト。前走が同じ直線競馬で3着ということで人気になったが、これが直線6戦目。直線鮮度が低く、前走も直線好走では単勝期待値が低い。普通はプラスポイントに思われることが、Mではマイナス評価になる。これこそが、Mの真骨頂だ。
さらには、前日には不利だった内目の枠を引いてしまった。
結果、レースは摩擦の薄い平均ペースで流れストレスの影響が出にくく、また内目の枠が有利な馬場に変わっていたこともあって2着にはなったが、ナイアードには勝てなかった。人気馬が危なく、買いたい馬が複数いるときは単勝多点買いの「単勝爆弾」が一番。もちろん私はナイアードの単勝5.9倍もしこたま買っていたのでかなり儲かった。ワイド1点の10倍も美味しい話になる。
翌週の土曜日。この日は飛翔特別という直線競馬が組まれていた。
1番人気はスイートライラ。これが美味しい馬券を提供してくれるのは、もうみなさんもお分かりだろう。直線競馬は8戦目。前走も3着に好走。直線鮮度が生涯、直近ともに低いので、単勝期待値も当然低い。2番人気アナタノネガイも直線4戦目で、前走直線競馬を0.1秒差接戦の2着。直線ストレスがきつい。
人気2頭が危ないならば、当然単勝勝負だ。
ここはほとんど悩まなかった。3番人気で単勝6.0倍のサアドウゾだ。
直線競馬は初めてだが、その戦歴を見れば直線競馬の適性が極めて高いことが分かる。
デビュー3戦目にして、ダート1400mをテン34.6秒のハイラップ逃げ。結果は12着も、S質の証明には充分だ。
気掛かりなのがここ数戦追い込んでいる点だ。直線競馬で間に合うのか?
だが、これもよく調べれば問題ないことが分かる。7走前には芝1200mの多頭数でハナ争いを演じた馬だ。本来、テンのスピードはあるはず。恐らくここ数戦追い込んでいるのは、前に行けないのではなく、精神コントロールの難しい馬なので、意識的に押さえ込んで後方で矯めているのだろう。この辺りはレースぶりを見ていれば分かることが多いが、技術的には難しいので、一般の人は過去に1200mを楽に前に行ったことがあるというデータを知るだけで充分だ。
ところで、この「押さえ込んでいる」ことは、極めて重要な要素を私たちに示唆している。精神コントロールが難しいということは、余計なことを考える暇のない、精神的な解放が可能な直線競馬では、大きなプラスに作用する可能性が高いのだ。
また、これは高等な判断方法だが、3走前に上がり33.2秒という高速上がりで追い込んで3着している事実に、この馬の心身構造に関する、ある重要な意味が隠されている。