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ランヘランバ東京JS物語

  • 2011年06月09日(木) 18時00分
 東日本大震災の影響により、施行が危ぶまれていた中山グランドジャンプが7月2日に行われることが決まりました!

 距離が4260m(芝Cコースを使用するため)になるなど、変更点はいくつかありますが、無事にジャンプ競走の春の祭典が行われるのは嬉しいことです。

 今週行われる東京ジャンプSは、そのグランドジャンプの試金石となる一戦。そのため、出走メンバーも障害巧者ばかりとなりました。

 そのなかでも、注目はランヘランバでしょう。なにしろ、昨年の春から8連続連対中。そのなかには重賞2勝も含まれていますからね。

ランヘランバ


 水曜日の追い切りには小坂騎手が跨り、CWコースを回った後、向こう正面の練習用障害へ。この障害練習の内容がすごかったんですよ。さすが、レース経験を積んできただけに、少々障害に慣れてきたようで、勢いをつけてポンポン障害を飛び越えていました。

 小坂騎手も「いつもは、ゆっくり走り出して飛越するんだけどね。今日のあの速さにはビックリしたよ。あぁ〜、すごかった」と驚いていました。でも、この馬の場合「障害をしっかり見て確かめてから飛ぶんで、飛越が危ないってことはないんだよね」(小坂騎手)
とのこと。

 さて、いまでこそ順調に戦績を重ねているランヘランバですが、実は平場レースで伸び悩んだ時期があったんです。

 その頃を堀添助手が振り返ってくれました。

「2、3歳の頃はすごくおとなしくて乗りやすい馬だったんだ。でも、5歳でオープン入りしてから少しうるささが出てね。それで、なかなか勝ちきれなかった。そんなとき、南井騎手が“この馬は手肢が軽いし、トモも強いですから障害に向いていますよ”とアドバイスしてくれたんだ」

 南井騎手は、その頃ランヘランバの調教を手伝っていたんですね。そのときの手応えから、「障害に向いている」と感じたそうです。

「初めて跨ったときからトモがしっかりしていました。だから、“この馬は走る。よく飛んでくれる”と確信できたんです」(南井騎手)

 その後、南井騎手が跨っての障害試験に合格すると、09年の11月に障害デビュー。ここをあっさり勝つと、あれよあれよという間に現在の地位を築いたんです。

 さて、8歳となったランヘランバですが、堀添助手は「障害馬になってからはおとなしくていい子になってきたね。可愛いんだよ」というほど、手のかからない馬となりました。

 このレースでジャンプ重賞3勝目を挙げ、大一番に臨みたいですよね。

 さて、そのほかに気になるのは、この春開業したばかり牧田厩舎所属のヒカリアライブ。前走は黒岩騎手を背に、2着に5馬身差をつけての勝利を飾っています。

 その強さの秘密を黒岩騎手に聞くと「もともと飛越が上手いんですよ。それに、飛んだ後でもスピードが落ちない」と教えてくれました。

黒岩悠騎手


 また、初障害重賞については「最近はトモに力がついてきて、最後までしっかり走れるようになり、いい結果を出せるようになりました。前目での競馬もできますし、距離も持ちますからね」と語り、気合い十分です。

 牧田先生は「一番働き盛りの5歳だからね。ここでしっかり勝って、駒を進めていきたい」と言います。ここで勝てば、開業年に初重賞制覇となりますから、楽しみですよね。

 もう1頭気になるのは、バトルブリンディスです。鞍上は高田騎手ですからね〜、何かやってくれそうな予感がします。

 さっそく高田騎手にバトルブリンディスのことを聞いてみました。

「もともと能力は高かったんだけど、精神面に甘いところがあって。ほら、前々走も…競走途中でやる気をなくしてしまった。それで、走りに集中するようにチークピーシーズを着用したんだ。これで、変わってくれるでしょう。これまで安定した走りをしてくれているので、ここらで力を出してほしいですね」(高田騎手)

 バトルブリンディスは、最後の直線での末脚も速いですからね。期待大です。

 さて、東京競馬でのジャンプ競走のコツを大御所である林満明騎手にうかがってみると「オープン以上のレースでは、発送が1コーナーからなので内枠が有利なんだよね」と一言。

 たしかに、僕の経験でもそうなんですよ。東京の障害コースは、スタートしてすぐコーナーなので、外枠の場合は先行するためにかなりの体力を使ってしまいます。

 ちなみに、「障害」に向いている馬のタイプはいろいろ。よく「飛越が上手い」と言いますが、その上手さも「踏み切ったところから長い距離を跳躍できる」「上に高く飛べる」「空中でのバランスの取り方が上手い」などさまざまなんです。

 この飛越の仕方は天性のもの。僕が中山グランドジャンプを制したときの相棒ビッグテーストは、そんな天性の能力の持ち主でした。飛ぶタイミングが、とっても上手かったんですよ。

 だから、「この馬は障害でやれる!」と直感しました。

 でも、向いているだけでは障害レースで勝つことはできません。スタッフが馬の体をじっくり観察し、障害練習をさせ、ケアをし、レース前には競馬場でスクリーングをして…と、人馬ともに大変な努力が必要なんです。

 そんな努力を重ねて晴れ舞台に立つ障害馬たちを応援してあげてくださいね。

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1977年8月2日、大阪府生まれ。96年3月に中尾正厩舎所属でデビュー。同期に福永祐一、和田竜二らがいる。96年3月10日、タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビューからの約5か月で12勝をマーク。しかし同年8月、レース中に落馬事故を起こし意識不明に。その後、奇跡的な回復をみせて復帰。03年には中山GJでビッグテーストに騎乗しGIを制覇をする。 04年8月28日、小倉競馬場で行われた豊国JSで再び落馬。レース復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は、栗東トレセンを中心に、精力的な取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)にて『常石勝義のお馬塾』(毎週土曜日9:45〜)に出演中。

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