春シーズンも終わり、注目のディープインパクト産駒の全体像が、よりはっきりした形で見えてきたので振り返っていこう。まず、以前書いた「間隔を取ってリフレッシュさせるとよい」というポイントを検証してみたい。
例えば、桜花賞を制したマルセリーナは中8週とたっぷり間隔を取っての出走だったが、それより間隔の詰まったオークスでは1番人気で4着に敗れた。また、NHKマイルCを中5週で2着に連対したコティリオンも、中2週のダービーでは14着に惨敗した。
ディープサウンドも中6週の共同通信杯では3着と好走し、続く中7週のニュージーランドトロフィーも4着と善戦。しかし中3週と詰まったプリンシパルSではブービーの17着に惨敗したのだった。
もちろん、間隔が開いていたら良く、詰まっていたら駄目というほど単純な話ではない。要は、どれだけ疲れているか? いかにフレッシュさを失っているか? の問題である。
例えばリアルインパクトは中3週で安田記念を制したわけだが、今回は初の古馬戦で精神的なフレッシュさ、鮮度が出走馬中ナンバー1で圧倒的に高い状態だった。また休み明けのニュージーランドトロフィーを11着に負けていたので、前走GI、3着の単純疲労はあったが、ディープインパクト産駒にとってより重要な蓄積疲労の影響からは解放されていた。
実は、安田記念の出馬表をパッと見たときは、鮮度の高いリアルインパクトを本命にしようと考えたのだが、前走GI3着の疲労と、中間の調教の緩さから疲労残りが気になって、相手の1頭にしたのだった。
この結果から、ディープインパクト産駒は1回の衝撃による単純疲労より、数戦にわたる蓄積疲労の影響の方が圧倒的に大きいという思いを強くした。このデータは今後の予想で大きな武器となっていくだろう。
次は適性の問題だ。
まず馬場だが、オークスは良発表でも、強く降りだした雨で、通常の重馬場以上に重かった。
このレースにはディープインパクト産駒が大挙6頭出走していたのだが、1番人気マルセリーナは4着、3番人気グルヴェイグが14着など、6頭とも馬群に沈んだのである。
このオークスの内容から、同じように使い込んだ馬の多かった不良のダービーでは、出走4頭とも予想では評価しなかった。もちろん結果も、最高が9着と想像通りの結末となった。
ただ、これをして、単純に重が決定的に苦手と断言するのも危険だ(得意でないことも確かだが)。ここで言えるのは、使い詰めで蓄積疲労のあるディープインパクト産駒は、タフな馬場になると蓄積疲労の影響が余計に出やすくなり、投げ出す確率が高まるということである。つまり、ここにあるのは、重の巧拙以上に蓄積疲労の問題なのである。
実際、ディープインパクト産駒が、重、不良で1着した3回は、「新馬」「休み明け」「デビュー2戦目での格上げ戦」と、蓄積疲労よりも鮮度の高さが上回っていたケースであった。