外資のダーレージャパンSCは、これまでにファンタスティックライト、アルカセットといった大物種牡馬を何頭も送り込んだが、まだ満足のいく成功を残せてはいない。
ファンタスティックライトはBCターフなどGIを5勝し、ジャパンCでも3着の実績を持つ。しかし、現3歳の初年度産駒はさっぱりの内容だ。
アルカセットもジャパンCの覇者で、父はエルコンドルパサー、キングカメハメハでおなじみのキングマンボ。それだけに期待は大きかったが、こちらも鳴かず飛ばずの成績に終わっている。
スタミナとパワーが要求される欧州の大レース。そこに彼らの目標があったため、スピードと瞬発力が最優先の日本の軽い馬場に、どうも対応しきれないようだ。
だが、問題は単にそれだけではない。社台グループがエース級の繁殖牝馬を抱えるのに対して、彼らが相手にするのは日高の中小の牧場がほとんど。この繁殖牝馬の質の差も、大きな原因となっている。
今夏、新種牡馬デビューするアドマイヤムーンが、果たしてどんな結果を残すか。
ドバイデューティフリー、ジャパンC、宝塚記念。この3つのGI勝ちは素晴らしく、海外においても、中距離において世界トップクラスの評価を得た馬だ。
母系も世界的な名牝系で、曾祖母のケイティーズは愛1000ギニー馬。近親に名牝ヒシアマゾン(エリザベス女王杯)、スリープレスナイト(スプリンターズS)がいる。エンドスウィープ産駒の遺伝力は未知数だが、母の父サンデーによる遺伝力のバックアップが期待できそうだ。
しかし、その一方で、サンデーの血が入った繁殖牝馬との配合は、まだ難しいという悲しい血のジレンマを抱える。社台グループは豊富な資本力をバックに、血の入れ替えに余念がないが、日高の生産者にはそんな余裕がない。
アドマイヤムーンはそんなハンデを抱えての船出となる。それは今後、急増するであろう「母の父にサンデー」が入った大物種牡馬の、共通した悩みでもある。