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ディープインパクト産駒/蓄積疲労(2)

  • 2011年06月22日(水) 18時00分
 次にディープインパクト産駒の配合面も考えてみよう。

 私はNHKマイルCが終わった直後の『競馬王』(白夜書房)の原稿で、リアルインパクトの配合だと、速い流れの内枠でも対応出来るという旨を書いた。

 ディープインパクト産駒は、以前に書いたように、経験の少ない厳しい流れに飲まれると良くない。したがって、速い流れの場合は、外目の枠の方がベターになる。

 実際、1番枠を引いたNHKマイルCでは、17番枠だった同じディープインパクト産駒のコティリオンに及ばず、3着に終わった。

 だが、それでも最内枠から速い流れを3着に走れたことは評価できる。
 リアルインパクトの母はトキオリアリティ。アメリカ産の典型的なスピード馬で、ダート1400mで初勝利し、芝1200mでその後2勝した。しかも、そのすべてが逃げ、先行押し切りと、S質[※注]の高さがうかがえる。ディープインパクト産駒にはS質が比較的欠如しているので、こういうS系との配合が速い流れの消耗戦での弱点を補いやすいわけである。

 また、気になっているのがダートにおけるディープインパクト産駒だ。

 成績で見ると、芝の単勝回収率が75円に対し、ダートは24円。ブレの少ない複勝回収率で見ても、芝80円に対してダートは66円。ディープインパクトのイメージ通り、明らかに芝の成績の方がいいし、間違いなく芝適性の方が高い。

 今のところ、ダートの500万以上を勝ったのは、ボレアスしかいない。だが、そのボレアスの成績は案外タフなものだ。

 未勝利の京都ダート1800mを勝ち上がった後、小倉のダート1700mで500万を1着。広いコースから小回りに変わって、しかもタフな多頭数を1着。その後も多頭数のダートで、タフな流れのレースを崩れずに走っている。

 芝のディープインパクト産駒は、こういう戦績の流れにはあまりならない。小回りなど前走より忙しい競馬になって投げ出したり、あるいは使い込まれて嫌気が差したりするケースの方が多いのだ。

 この違いはどこにあるのか?

 まず第一に、ダートの方が負担が掛からないので、ネックになる蓄積疲労の心配が少ないことが挙げられる。

 さらにはボレアスの血統構成だ。母父がフレンチデピュティで、母クロウキャニオンは主にダート1400mで好成績を挙げた馬である。つまりS質が強い。この配合は前述のリアルインパクトに似ている。

 S質な配合の方が、激流の中に自在に入れて、ディープインパクト産駒のS質の欠如という難点を補える可能性が高まるわけだ。

 だからといって、必ずしもS質の配合が大物を生み出すということではない。弱点を補って、激戦でもブレの少ない産駒を出す可能性が高まるだけであって、より強い産駒なら、量系を配合して長所を伸ばした淡泊な芝中長距離馬になるかもしれない。

 ここで重要なのは、ディープインパクト産駒のタイプ分け、つまり次のレースでどういう走りをするかであって、どの配合が強いという類の話ではないのだ。

 ところで、そのボレアスの主戦場は1600m以上になっている。
 S質の配合を重ねても、本質的な部分でS質が強すぎるということは、ディープインパクト産駒ではあまり起きないということだ。したがって、よりS質なダートでは、1200mより中距離の方が強い産駒、アベレージのある産駒の出現確率は高まると考えて良いだろう。

[※注]
S(闘争心)
 M3タイプの一つで、闘争心を持つ馬を表す。他馬との関係性を絶ち、自分勝手に一本調子に走りきろうという性質。Sの由来は闘争を表す“Struggle(英)”の頭文字から。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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