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netkeiba

海外輸入の新種牡馬

  • 2011年06月24日(金) 12時00分
 サンデー系の圧倒的優位、景気の低迷などで、海外からの大物種牡馬の輸入は、このところ停滞気味だ。今年の新種牡馬にもそれが顕著で、全体に魅力に乏しいラインナップになっている。

 ケイムホームはJRAが購入し、日本軽種馬協会に寄付したものだ。アメリカで通算12戦9勝。2歳時はデビュー以来3連勝でGIのホープフルSを勝ち、3歳時もGIのサンタアニタダービー、パシフィッククラシックを勝つなど、競走成績自体は悪くない。

 ミスタープロスペクター系らしく仕上がり早で、スタートダッシュとスピードに優れ、2000mあたりまで楽にこなす距離の融通性もあった。

 しかし、アメリカの種牡馬成績は平凡。勝ち上がり率はまずまずだが、昇級後の上積みがない産駒が目立つ。事実、アメリカに5世代を残してきたにもかかわらず、GIIIウイナーがわずかに1頭だ。

 日本に輸入直後、持込馬のケイアイライジンがプリンシパルSを勝って注目されたが、やはりその先は尻すぼみの成績に終わった。本質は早熟の短中距離血統で、2歳戦とダートの短中距離戦が主戦場となるだろう。クラシックの活躍は期待しづらい。

 ファスリエフは欧州の2歳戦で、デビュー以来5連勝(うちGI2勝)し、欧州2歳牡馬チャンピオンに選ばれた。クラシックを前に骨折して種牡馬入りしたが、その仕上がりの良さとスピードをよく伝え、新種牡馬による2歳勝ち馬頭数の世界記録を樹立した。

 成功の可能性は、ケイムホームよりもはるかに上だろう。いかにも欧州タイプの力のスピード血統で、古いファンには「スティールハートのようなタイプ」、と言えばわかりやすいかもしれない。

 活躍の舞台は、2歳戦と短距離戦に限定されるだろう。日本の馬場ならマイルまでこなしそうだが、クラシックの底力には疑問が残る。

 他のフォーティナイナーズサン、スタチューオブリバティ、シニスターミニスターもそれぞれ競走成績や血統に魅力はあるが、肝心の遺伝力がまだ判然としない。初年度産駒は模様ながめに徹するのが得策だ。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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