芝3000m以上の重賞での6歳以上の成績は、単勝回収率43円、複勝回収率59円と急降下するのだ。連対率も8.3%と確実に低下している。
ここまで見てきた4歳と6歳以上の距離における芝重賞成績を整理すると、4歳では単勝回収率が「1200m、56円」→「3000m以上、88円」と約30円の大幅アップ。逆に6歳以上では「1200m、134円」→「3000m以上、43円」と約3分の1に激減していた。
連対率も4歳は「1200m、14.4%」→「3000m以上、22%」と1.5倍もアップ。逆に6歳以上では10.8%→8.3%と2割ほどのダウンになっていたわけだ。
極限時で生命力そのものを問われる重賞でのこの圧倒的な数字は、「高齢馬が短距離を得意とし、若い馬は長距離を得意とする」という、Mの生命力理論から導き出された結論を、疑いようのない形で証明するものに他ならない。
この生命力問題は、その最高峰であるGIで見てみると、より顕著になる。古馬が走る最長距離のGIが天皇賞・春。最短のGIがスプリンターズSと高松宮記念だ。
その最長距離GIの天皇賞・春に関して、「えっ?そんなに高齢馬に不利だったっけ?」と思う読者も多いはずだ。
印象というのは恐ろしいもので、05年の7歳馬ビッグゴールドが14番人気で2着に激走したことや、09年の6歳馬マイネルキッツの12番人気激走などが、そういう思いにさせる。
だが、その影には数多くの高齢馬が消えている。また今年勝ったのは7番人気だった4歳馬ヒルノダムールで、昨年16番人気で3着に激走したのも、4歳のメイショウドンタクだった。人気に関わらず4歳馬は常に激走しているのだ。
実際のところ、天皇賞・春での4歳馬の単勝回収率は75円、複勝回収率91円で、6歳以上は単勝回収率42円、複勝回収率42円と、その差は歴然としている。
「いやいや、4歳の方が勢いがあるから、GIで回収率が高いのは当然だろう」と、まだ疑われている読者も多いかもしれない。
では、芝1200mのGIではどうか?
これがまた驚愕の数字なのだ。
4歳の単勝回収率は、な、な、なんと!たったの23円…! 複勝回収率も52円しかない。ゾッとするほどの数字だ。逆に6歳以上の単勝回収率は、これがまた驚愕の166円!! 複勝回収率も60円と天皇賞春を上回っている。
実はこれらのデータを知らないで、私はこの原稿を始めたのだった。ある程度の数字は出るだろう、「少なくとも長距離は高齢馬が有利」という間違った常識を疑う契機をみなさんに与えるぐらいの数字は出るだろうと思って調べてみたのだが、現実はその想像を軽く超えていたのだった。
が、真の恐るべき問題は、実はこの数字には表れていない。もっとデータを掘り下げた、隠された部分に、生命力と距離の関係性の恐ろしさは眠っているのである。
データ自体が凄かったのでつい盛り上がってしまったが、私はその裏の話をするために、この原稿を書き始めたのだ。
(次週へつづく)