ファインモーションは落ち着いていた。また、相手の有力馬の脚質や、取るだろう戦法も十分にわかっていた。したがって、変にイレ込んだりせず、落ち着きを保った状態でゲートインできた時点で確勝だったのだろう。
逃げ馬ユウキャラットの作ったペース、前半5ハロン60秒8というスローペースも、先行抜け出しの形をもつファインモーションにはいかにもレースのしやすい流れで、あとは折り合っていつスパートするかだけだった。
ペリエ騎手のダイヤモンドビコーがファインモーションをマークしているだけで、みんな勝ちに出ることができない。4コーナー手前から加速したファインモーション自身の推定ラップは(11.2−10.8−11.2秒)=33秒2。とてもふつうの馬の踏めるラップではなく、先行したファインモーションがこの上がりを記録したのでは、ダイヤモンドビコーも追いすがることはできず、みんな自分の立場の形作りをしただけだった。
ファインモーションの最大の長所が前面に出てきた。距離もこなせるだろうが、この天才牝馬、圧倒的なスピード馬である。でなければ、いかにスローとはいえ、上がり33秒2(10秒台を含み)の爆発スピードは繰り出せない。強さの秘密はケタ違いのスピード能力にあったのだ。
もし来季、安田記念にでも出走することがあったら、1分32秒ぐらいで独走だろう。このあと、どんなローテーションで、どこを使うかだけが興味になった。夏以降に5戦もした目に見えない消耗もあるはずで、出走しては欲しいが、有馬記念はパスが正解だろう。明けて来季、4歳時の望は世界しかない。
ペースメーカーがしかるべきペースを作れなかったため、他馬は一応は自分のレースをして、それなりの形作りをしたというだけにとどまった。これは仕方がない。勝った馬のランクが、別の次元だった。挑戦者になることも許されないレースだった。