長距離と比べて、短距離は生命力が必要ないぶん、重賞でも高齢馬は走れるということはこれまで触れてきた。
実際、芝1200mの重賞では単勝回収率134円、複勝回収率71円、GIに限っても単勝回収率166円、複勝回収率60円だから、ほぼその比率に変化がないこと、また20年以上の集計期間ということからも、かなり信憑性の高いデータと言えるだろう。4歳の異様に低い回収率を見れば余計に、高齢馬の芝1200mにおける頑張りは驚異に思える。
実際、今年の高松宮記念も8歳のキンシャサノキセキが制したし、昨年のスプリンターズSでそのキンシャサノキセキを抑えて勝ったのも、8歳の外国馬ウルトラファンタジーだった。
高松宮記念で、日本馬の人気薄でGIを連対した馬を見ても、10年の6番人気2着ビービーガルダンは1200mの常連で、1200mのGIは4戦目、05年の6番人気2着キーンランドスワンも1200mの常連で、1200mのGIは3戦目だった。
激走馬のパターンも、天皇賞・春とは全く様相が異なっている。こと1200mに関して言えば、生涯の鮮度はそれほど影響がないのだ。だから高齢馬の成績も、自ずと長距離より良くなる。短距離は飽きる暇がないので、身に染みついてる反射的な反応の方が、鮮度低下によるマイナス面を上回るケースも多いわけだ。
「キャリアの浅い馬は長距離向きで、ベテランは短距離向き」という、世の常識とは全く逆の世界が、現実では展開されているのだ。
ここまでは、1200mと3000m以上という、極端な世界で解説をしてきた。この場合、距離の長短は結果に直結していた。だが、全体の距離で考えると、それほど単純化出来ない問題が出てくる。
ブレの少ない複勝回収率で6歳以上の芝重賞成績を見ると、以下のようになる。
1000m-31円、1200m-71円、1400m-65円、1600m-71円、1800m-72円、2000m-70円、2200m-66円、2400m-46円、2500m-87円
まず、短い距離で特徴的なのは1000mと1400mの落ち込みだ。ここで始めて、年齢による「軽さ」の低下という概念が出てくる。
根幹距離の1200mでは精神的なタフさなど、様々な要素が与える影響が強くなる。だが、非根幹距離で行われる1000m、1400mでは、純粋な「軽さ」の要求率が高くなってくるのだ。