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第5回JRAジョッキーDAY

  • 2011年08月24日(水) 18時00分
 今やすっかり夏のばんえい帯広の名物イベントとなったJRAジョッキーの参加するエキシビションレースが、22日(月)に行われた。

 今年は藤田伸二騎手(5年連続)を筆頭に、安藤勝己騎手、勝浦正樹騎手、そして昨年より参加している武豊騎手、三浦皇成騎手など計10人。そのうち初参加となるのは、吉田豊騎手と隼人騎手、小林徹弥騎手の3人である。

 帯広競馬場は、天候曇り時々晴れとまずまず。気温は20度前後と、もう北海道は秋の気配である。来場者の服装にも長袖が目立った。

初参加の小林徹弥騎手、練習にも熱が入る
初参加の小林徹弥騎手、練習にも熱が入る

 全12レース中、JRAジョッキーによる協賛レースが5、6、7、8に組まれている。また実際に彼らがソリに乗って参加する模擬レースは9レースと10レースの間の午後6時半前後、そして11レースと12レースの間の7時50分前後に予定されている。

 場内はJRAの人気ジョッキーたちを一目見ようと早い時間帯から多くのファンが来場した。

 午後3時を過ぎた頃、パドックの一角にある表彰スペースにJRA騎手たちが集まり、抽選会が行われた。あらかじめ枠順と、コンビを組むばんえい騎手は決められているので、ここでは馬の抽選なのである。

 パドック前は黒山の人だかりであった。それぞれ携帯電話やデジカメなどを手に写真を取る姿が目に付いた。ジョッキーの名前を呼ぶ黄色い声も聞こえる。改めてJRAジョッキーたちの知名度と人気の高さを思い知らされる場面であった。

 今回の初参加組は、この後、練習走路にて本職の手ほどきを受け、そりに乗っての特訓が行われた。吉田兄弟と小林徹弥騎手の3人が、1人ずつ技術指導を受けながら手綱を操作する。初めて乗るそりに戸惑いながらも、楽しそうに練習する姿が印象的であった。

とりわけ、吉田兄弟(豊騎手と隼人騎手)が仲良く一台のそりに乗っている姿が微笑ましかった。

仲良く1台のソリで練習する吉田兄弟
仲良く1台のソリで練習する吉田兄弟

協賛レースの第一弾は5レース。出走は3時50分である。まず初参加の3人がレース後に表彰式のプレゼンターを務めた。この頃にはパドック前に多くのファンが押し寄せ、最前列に陣取った人々は手に色紙とサインペンを持っていた。

 表彰式後のサイン会が目当てのこれらの人々は、目当ての騎手の名前を呼びながら色紙を差し出す。もみくちゃになりながら声を枯らして「お願いします」と連呼するファンが大勢いた。協賛レースが終わるとジョッキーたちが現れ、表彰式の後にサイン会を行うという流れが4回繰り返された。

 やはり圧巻だったのは8レース後に武豊騎手が現れた時である。この人の人気はここでもダントツで、中には写真パネルやゼッケン(レプリカ?)を持参してきている熱心な人もいたほどだ。しきりに「武さーん」と声がかかる。大変な混雑であった。

武豊騎手はファンからのサイン攻めにもにこやかに応えていた
武豊騎手はファンからのサイン攻めにもにこやかに応えていた

 10レースに出走する各馬がパドックを周回し、馬道をスタート位置まで移動した頃、いよいよ最初の模擬レースに出走する各馬がパドックに姿を現した。もちろん馬券発売はないのだが、勝ち馬予想クイズは行われる。大型馬にJRAジョッキーが騎乗する姿は、見ていてやや違和感があるほどアンバランスに映る。

 厩務員に引かれた各馬は周回もそこそこにすぐ発走地点まで移動する。

 最前列のエキサイトゾーンにはズラリとファンが並び、皮肉なことに本物のレース以上の注目度である。

 午後6時40分。模擬第1レースがスタートした。難なく第一障害を越え、そのまま第二障害の手前まで進む。そこで一息整えるのは本物のレースと同じである。

 ばんえいレースに絶対の自信を持つ藤田伸二騎手は、第二障害の上でコンビを組む藤野俊一騎手(本職)と別れを告げ、そこから一人で手綱を操作し、見事に1着でゴールインした。レース後、周囲から「伸二さん、70キロはハンデが軽いよ」などと言われていたが、見事なレースぶりで観衆を大いに湧かせた。

男・藤田伸二は一人旅で果敢に勝負を挑む
男・藤田伸二は一人旅で果敢に勝負を挑む

 まず藤田騎手が1着で20ポイントを獲得。2着が勝浦騎手(15ポイント)、3着が初出場の小林騎手(13ポイント)という順である。

 注目の武豊騎手は6着。見ていると明らかに藤田騎手とは“キャリアの差”が出ていた。

 ところが、10、11レースを挟んで行われた模擬第2レースでは、武豊騎手が積極的なレース運びで、コンビを組んだ島津新(ばんえいの若手イケメン騎手)も驚くほどの見事な手綱さばきを見せ、何と1着でゴール板を通過した。

ユタカ&アラタのイケメンコンビで勝利!
ユタカ&アラタのイケメンコンビで勝利!

 その結果、ポイントで総合優勝となり「4回目にしてやっと夢(1着)が叶いました」とにこやかに語って場内のファンを笑わせた。そして「また来年もぜひ参加したい」と力強く予告するおまけつきであった。

「形態は違っても同じ競馬ですし、ばんえい競馬を盛り上げるために協力は惜しまない」という武豊騎手の姿勢には頭が下がる。

 そして、影の功労者である藤田伸二騎手の存在も大きい。第1レースを制したことで、かなり気合が入っていたが、第2レースではトウリュウ号が動いてくれず馬群に沈んだ。

 しかし、レース後、ばんえい騎手との記念撮影の時には藤田騎手が武豊騎手の腕をさり気なく掴んで持ち上げ、勝者を称える配慮を見せてくれたことを付記しておく。

藤田騎手が勝者であるユタカ騎手の腕を上げる
藤田騎手が勝者であるユタカ騎手の腕を上げる

 この日、帯広競馬場には4026人もの入場者があり、大賑わいであった。だがその一方で、肝心の売り上げは7221万円余。入場人員は前年比で+436人ながら売り上げは約1500万円もの減少で、この辺に今のばんえい競馬の抱える問題がありそうだ。

 三連勝馬券の導入により、売り上げはやや回復傾向にあるとはいうものの、まだまだ茨の道が続く。

 華やかなイベントで賑わっていても、多くのレースは1着賞金が7万円、2着1万4000円という水準である。関係者の生活がこれで成り立つのかと疑わしくなる数字だ。

 いずれまた機会を見て帯広を訪ねる予定でいる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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