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高齢馬激走の新たな秘密(2)

  • 2011年09月07日(水) 18時00分
 今週は新潟2歳Sと小倉2歳Sの2歳重賞で共に本命が勝って、馬単も1点目で当てることができた。

 これで今年の2歳重賞はすべて本命が勝ったことになる、そのうち2頭が新種牡馬の産駒だった。実は新種牡馬には、共通する特有の狙い方があるのだ。今回はそれについて書こうかとも思ったが、さすがに話が飛びすぎるのも何なので後の機会に譲って、今週は高齢馬の話の続きをしよう。

 今年の新潟記念ではサンライズベガ、札幌記念ではアクシオンと高齢馬が連対した。この2頭を最終的に選んだポイントには、共通項があったからだ。

 それが「闘う意欲」である。

 この、Mの解説によく出てくる抽象的な言葉の意味を、この2頭を使って具体的に見ることで改めて考え直してみよう。まず最初に基本的なMの馬券ポイントを確認しておく。


 札幌記念のアクシオンはサンデーサイレンス産駒で、M3というタイプ分け理論ではC要素が比較的強いタイプだ。C要素が強いと、馬群に入っても怯まない。したがって内枠で馬群を割る形は、好走パターンの1つになる。

 またC系は徐々にリズムを上げて集中していく形がベター。休み明けから10着→3着と着順を上げてきた臨戦過程もプラスになるわけだ。

 新潟記念のサンライズベガはアドマイヤベガ産駒。M3でいう闘う意欲の強いS要素と、集中力を表すC要素を強く持っている(SC(L))。また、『ポケット版大穴血統辞典』(白夜書房新書)で書いてあるように、アドマイヤベガ産駒は高齢まで走るという特徴がある。

 そして今回の最大のポイントは、前走がテン33.3秒という、2000mのレースとしては殺人的なハイラップだったことだ。先行馬には厳しい展開で、先行したものの、途中で徐々に後退して、4角では8番手という内容に終わった。これが実に良い。

 今度は広い新潟の外回り。しかも逃げ馬不在。スローは誰がどう考えても確定だろう。ということは、前走より楽に先行できるようになる。以前にも解説したように、馬にとって最も重要なのは、「前走との落差」なのだ。前走より楽に感じれば、気分良く走ることができる。

 しかも逃げ馬不在なので、唯一と言っていい純粋な先行馬である同馬が、逃げる可能性はかなり高い。

 もし逃げるとなれば、以前この連載で書いた「逃げられなかった逃げ馬」の位置取りショックが完成する(前走逃げなかった馬が逃げるというショック療法。その効能については以前の連載部分を参考にしてほしい)。特に重賞で逃げ切るには、前走逃げていない逃げ馬が最も有効なのである。

 気掛かりなのは、新潟開催での新潟記念が、過去20年間一度も逃げ馬が連対していないという、他に例を見ないほどの究極的に逃げ馬に不利な重賞だということだ。

 だが、そのデータをも覆してしまうポイントがあった。サンライズベガが、生涯でまだ一度しか逃げていないという事実である。

「逃げる」という行為に対しての生涯鮮度が極めて高いのだ。ちなみに、そのたった1回の逃げのときも同じ9番人気で、「逃げられなかった逃げ馬」を決め、2着に激走したのだった。

 そして今回の新潟記念でも実際に逃げたため、逃げられなかった逃げ馬を完成させ、9番人気の人気薄にして、新潟開催では実に1988年以来の、もちろん新装新潟競馬場では初の、新潟記念を逃げて連対した馬となった(データとは、このようにMのショックによって、あっけなく崩れ去るのだ)。

 以上見てきたのは、Mの基本的な馬券ポイントになる。真の問題は、そこに隠されている、「闘う意欲」という「見えない意志」である。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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