サンデーの全盛期にこう言われたものである。
「この血統の持ち味はスピードと瞬発力。日本の高速馬場でそれが生きるわけだから、欧州の重たい馬場には合わない」
しかし、革命的な種牡馬は一つの共通項を持っている。それは自身の長所を最大限に伝える一方で、配合牝馬の資質の高さ、血統の良さを損なわず、うまく引き出してくる柔軟な和合性だ。
その意味で革命的な種牡馬は、カンフル剤みたいなものと言っていい。しおれた花を、元気な姿に戻す活性剤だと言ってもいい。だから配合牝馬に応じてバラ、サクラ、ユリ…といった様々な花を咲かすことになる。
サンデーもこれに近いものを持っていた。事実、配合牝馬の血統レベルと特徴が、そのまま産駒のレベルと特徴になっている。三冠レースの優勝馬がそれを端的に物語っているだろう。三冠レースを勝ったサンデー産駒は13頭いたが、うち11頭までが良質の繁殖牝馬を擁する社台グループの生産馬だった。
またサンデーの初期の大物は、スタミナ、パワー、成長力に不満が残るものが多かったが、中期以降の大物は万能性に富み、成長力も備わったものに様変わりした。これも配合牝馬の特徴の変化が大きく影響している。
初期のサンデー産駒が、海外で通用しなかったのは、その資質的な違いにある。だから海外の繁殖牝馬に配合し、それぞれの国で調教して走らせてみれば、ニーズに合った馬に育つ可能性が高い。
近年、その兆候が見え始めていたが、フランスでデビューしたハットトリック産駒のダビルシムが、4連勝で2歳GI勝ちを飾り、新たにそれを実証することになった。
日本は今、サンデー系の天下だが、それゆえにサンデー系同士の「血の共食い」が激化している。結果、マンハッタンカフェのような欧州仕様の種牡馬が、いま一つその良さを生かし切れていない。
欧州に持っていき、現地の繁殖牝馬に配合するチャンスを与えてみてはどうだろう。日本とはまるで違った産駒を出す気がしてならない。