荒尾競馬の公式サイトのトップページに、「荒尾競馬組合における競馬事業廃止について」として、荒尾競馬組合管理者からのお知らせが掲載された。
それによると、荒尾競馬場での競馬開催は12月23日が最後となる。そして来年3月末までは場外発売を行うが、平成24年度以降については協議して決めるという。
荒尾競馬では当初、今年も例年どおり大晦日に重賞・肥後の国グランプリが予定されていた。ところが今、公式サイトの開催日程を見ると、大晦日の開催が消されていて、肥後の国グランプリもなくなっている。
たしかに大晦日が開催最終日となるのはさまざまに混乱が生じるかもしれない。ただ肥後の国グランプリは、佐賀の中島記念とともに、年末に行われる恒例の大一番だ。開催最終日の23日に移動して行うことはできないものだろうか。関係者にとっても、ファンにとっても、それが荒尾競馬の最後の思い出となるだろうに。
というわけで、荒尾競馬の廃止が正式に発表されてしまった。先々週のこのコラムでも書いたが、日本全体で競走馬の頭数が減っているため、競馬の開催が縮小傾向となるのは避けられないこと。今の地方競馬の体制では、主催者同士での吸収合併などが無理であろうことから、結果的に今回もひとつの競馬場が廃止という道をたどることになった。
心配になるのが、関係者の今後だ。主催者ごとに厩舎関係者を囲い込む日本の競馬のシステムは、全国の競馬が独立して健全に経営できていた時代はそれでよかった。まじめにさえやっていれば、生活がある程度保証されるよう機能していたからだ。それゆえ、そのバランスを崩さないためにも、騎手や調教師の移籍が難しくもなっていたのだろう。
しかしそうしたシステムの中で、いざ競馬場廃止という事態が起こると、個人個人の技量や技術の程度に関係なく、その競馬場に所属していた人たちが一斉に職を失うことになる。
話はちょっと逸れるが、競馬場が廃止になりながら、移籍もせず、ベースとなる厩舎や競馬場もなく、期間限定騎乗や外国の短期免許で騎乗を続けている内田利雄という騎手はあらためてスゴイと思う。宇都宮競馬が廃止されてからもう6年半も経った。今年10月には50歳になる。思えば、地方競馬に期間限定騎乗という制度ができて、所属場以外の競馬場でもある程度自由に騎乗ができるようになったのは、内田騎手が起こした行動がきっかけだった。
とはいえ、競馬場が廃止されても移籍をせずに騎手が続けられるというのはきわめて特殊な例であり、内田騎手の技術や人柄ゆえのこと。前々回、このコラムで書いたことの繰り返しにもなるが、荒尾に続いて廃止となる競馬場が出てくる前に、地方競馬全体のシステムをもう一度根本から考え直す必要があると思う。