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激走する高齢馬の共通点

  • 2011年09月21日(水) 18時00分
 過去1年間で、芝重賞を3着以内だった7歳以上の超高齢馬リストを先週掲載した。

 この17頭のリストを見ていると、似た傾向があることに気付く。ほとんどが非L系の種牡馬の仔なのだ。


 まとまり系を含めてL主導の父を持つ馬は、ネヴァブション(マーベラスサンデー)、ミヤビランベリ(オペラハウス)、アーバニティ(マンハッタンカフェ)の3頭しかいない。

 このうち、ネヴァブションの父マーベラスサンデーは『ポケット版種牡馬辞典』(競馬王新書)ではSが強い」と表記したように、Sのかなり強いL系だ。予想着順で発表している表でも、ネヴァブションはS系と表記されている。実際、広いコースより、中山の混戦で強引に走る形を得意としていた。

 ミヤビランベリはL系オペラハウスの産駒だが、自身は逃げ馬だ。強引に逃げて不良馬場を圧勝するのは、闘う意欲の強いS系の主な特徴になる。

 アーバニティはL系オペラハウス産駒だが、激しい流れの1200mで好走しているようにS質な部分がある。

 つまり、戦績からも闘う意欲が強いS質の特徴を持っている馬が非常に多いのだ。過去にもL系で高齢まで走った馬には、先行馬、その中でも逃げ馬が多かった。

 つまり、「より前に行こう」という意思を持った馬だ(高齢のL系の場合は、淡々と逃げることで他馬との心身摩擦を減らして、量的優位性を発揮させて走る部分も大きい)。
 
 あるいは馬群の中で頑張れる数少ないC要素を持った馬も、何度か激走している。

 私はこれまで「L系の方が淡々と走れるので、高齢まで走ることができる」という旨を書いてきた。

 それは事実ではあるが、ある年齢、具体的にはだいたい7歳を超えるような超高齢になって、トップクラスの芝重賞を走り切るには、相手を押し退けてでも走ろうとする意欲がないと厳しい部分があるのだ。

 L系が高齢になっても何となく走れるのには、理由があった。

 それは、L系の長所である「量」が、年齢とともに低下しにくい肉体要素があるからである。したがって、他の心身機能が衰えても、安定して好走できるわけだ。

 だが、その量も7歳を超えると、次第に低下していく。

 その中で、さらに前に出ようとするには、どうしても「闘う意志」が重要になってくる。だからS系やC系の方が、7歳以上の超高齢の激走が多いのだ。


 高齢で激走するパターンは「好位の外々を淡々と回って」というような形は少ない。

 たとえば、直近で7番人気以下の超人気薄から、3着以内に入った7歳以上馬を見てみると、新潟記念のサンライズベガ(S主導)は逃げ、函館記念のマヤノライジン(C主導)は16頭立ての3番枠から馬群を割る形、アクシオン(S主導)も13番枠だったが上手く馬群に潜り込んで内を割る形、目黒記念のキングトップガン(S主導)は前走追い込んでいた馬が延長で2番手に行くという「前に行く位置取りショック」だった。

 つまり、M3タイプに応じて、S要素を出して強引に前に行く形や、C的に馬群を割る形になっている。

 外を回る形でも、たとえば福島記念で単勝64倍を叩き出したダンスインザモアのように、最後方からためにためて追い込むという、S系の荒ぶる精神をコントロールするのに有効とされている、極端な策がハマまったものだった。
 
 心身機能は徐々に衰えていくが、このようなS的な闘う意欲や、C的な馬群を割る気力。これは歳を取っても爆発することが度々あるのだ。

 だが、もちろんそのような精神的な爆発は心身消耗が激しいので、残念だが若い頃のようには持続しない。一瞬しか花開かないのだ。

 では、それは一体、どういった瞬間なのか?

(次週につづく)

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Strugge」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。 Lの由来は「Light」の頭文字から。

M(まとまり系)
ひとつのタイプに偏らず、すべての要素を持ち、全体的にまとまっている馬。そのため、大きな特徴はないが、どんな条件も適度にこなせる。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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