高齢馬が一瞬輝きを放つ瞬間。それはどういうときなのだろうか?
基本的にはMのリズムに準じている。
例えばC要素のあるアクシオなら、10着→3着→2着と徐々に集中しながら激走した。同じC系のマヤノライジンの場合も、11着→6着→2着と激走し、また昨年の9歳時の勝利のときも、14着→3着→1着と徐々にリズムを上げているときだった。
このように、C要素がある場合は、ある程度調子を上げているときのタイミングがいい。そういう状態のときに、混戦になって集中力を活かせそうなレースがあったら、激走確率はぐっと高まるわけだ。
S要素の強い高齢馬の場合は、やはりS系の好きな位置取りショックが基本になる。
以前見たように、新潟記念のサンライズベガは前走逃げなかった馬が逃げに出るという位置取りショックだった。目黒記念のキングトップガンも前走3角9番手の競馬から、今回は2番手に先行するという位置取りショックを決めての激走だ。
この位置取りショックも鮮度が高ければ高いほど良く、キングトップガンがスタートから先行して3角2番手以内の競馬をしたのは、実に23戦ぶりのことだったのだ。以前、私が新潟記念でサンライズベガを、メンバー的に久しぶりの逃げを打つ可能性が高いとして本命にして、実際に18戦ぶりに逃げたので連対したのと同じ形である。
そしてキングトップガンの次走函館記念は、前走の先行と一転、今度は3角9番手と差しに回る位置取りを決めて連勝したのである。
ちなみに、目黒記念は「延長で前に行く位置取りショック」、函館記念は「短縮で差しに回る位置取りショック」という「Mの順ショック」を仕掛けたための激走だった。
S要素の強い高齢馬を走らせるには位置取りショックが有効だという自覚が、横山典弘騎手にあったかどうかは分からないが、肌で理解しているはずだ。実際、目黒記念で差し、函館記念で先行という逆の位置取りを選択していたら、2レースとも勝利はおろか、惨敗していただろう。それぐらいに位置取りショックとは重要なのだ。
したがって、続く札幌記念では、また前走の差しとは一転、逃げに出る位置取りショックを仕掛けた。
しかし惨敗。
これを「無謀な逃げなんかに出て」と怒ってはいけない。恐らく前走と同じ差しに出ていても、あの内容から連対はできなかったはずだ。何故なら、この凡走は、ここ2戦の蓄積疲労が出てしまった形だからだ。
高齢馬は2回連続で好走することは多いが、かなり間隔を開けないと、なかなか3戦目はない。疲労の蓄積具合が若い馬より激しいので、3走連続好走というのはハードルが相当高くなるのだ。
同じ理由で、使い込まれている馬が凡走後から激変することも少ない。サンライズベガの新潟記念は休み明け5戦目だったが、このぐらいが限界だろう。
使われていくと、高齢馬は蓄積疲労が溜まってしまう。サンライズベガにしても、叩き5戦目とはいえ、2走前は中5週開いていた。ある程度リフレッシュはされていたわけだ。
激変を狙うなら休み明け3戦以内が望ましいのは言うまでもない。
このような高齢馬激走のタイミングを念頭に、その馬のタイプを考慮して、重賞で高齢馬から大穴をゲットしていただきたい。
※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Strugge」の頭文字から。
C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。
L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。 Lの由来は「Light」の頭文字から。
M(まとまり系)
ひとつのタイプに偏らず、すべての要素を持ち、全体的にまとまっている馬。そのため、大きな特徴はないが、どんな条件も適度にこなせる。