昨年のジャパンC当日、シンボリルドルフがお披露目で東京競馬場に来ていた。
私もこの日は、朝の1レースからスタンドに陣取っていたが、先に見に行った知り合いが「とても29歳とは思えぬ若々しさで、毛づやもピカピカでしたよ」と言うので、「じゃ、混雑をかき分けて無理に行くこともないか」と、そのまま馬券検討に没頭してしまった。
今月の4日、千葉のシンボリ牧場で大往生を遂げたことを知り、「あのとき、やっぱり行っておくべきだった」と、今になって後悔している。
ほんの数日前、北海道門別のシンボリ牧場場長だった畠山和明さんから、「38年間にわたり勤務してまいりましたシンボリ牧場を退職致しました。その間皆様の支えがあってダービー馬、七冠馬など何らかの形で名馬にたずさわることができたこと、私にとりまして幸福な馬人生でした」と、退職の知らせが届いたばかりだった。
シンボリルドルフを育てた場長が去り、時を同じくしてシンボリルドルフ自身も息を引き取った。激変する競馬環境のなか、またひとつ私の時代が終わった。
さりとて、ここで立ち止まるわけにはいかない。今秋はオルフェーヴルが新たな三冠馬になろうとしているし、2歳戦では来年のクラシックを目指して素質馬が相次いでデビューしている。
海外遠征も活発になった。昨秋の凱旋門賞では、ナカヤマフェスタがあわや勝とうかという走りを見せた。だが、今年のナカヤマフェスタは、フランス入りしたときから調子落ちが伝えられていた。やっぱり回避すべきだったのかもしれない。
ヒルノダムールはトライアルの内容が良かったし、父マンハッタンカフェ×母の父ラムタラという配合は、いかにも欧州の競馬向きと思えたが、残念な結果に終わった。
しかし、いつかは日本馬が凱旋門賞を勝つ日が来るだろう。シンボリルドルフの死は寂しいが、気持ちは常に前を向いていたい。