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天皇賞秋のマイナス体重

  • 2011年10月25日(火) 12時00分
 競走馬の使い方というのも、時代によって変化するものである。

 例えば三冠路線だと、昔は有力馬がトライアルを負けてもいいような前提で使い、本番に向けてメイチの仕上げをする傾向があった。それ以前の問題として、トライアルの「出席率」が尋常ではなかった。メジロラモーヌのようにトライアルまでセットの三冠馬というのは今後出てこないだろうし、牡馬では皐月賞馬がダービートライアルに出走したケースというと、アズマハンターまで遡る。

 古馬においても、ステップレースと本番の位置づけは変わりつつある。天皇賞秋でいうと、宝塚記念からぶっつけで使う馬が増えたし、札幌記念など中2週(毎日王冠・京都大賞典)を避けた使い方も普及してきた。

 それでもファン心理とは変わらないもので、例えばトライアルをちょっと余裕残しの体で使い、本番でマイナス6〜8キロくらいの馬がいたとする。「ここでこそ買いだ!」となるが、少なくとも天皇賞秋で言うと、マイナス体重の優勝は少ない。

 2キロ減の優勝馬はいくらでもいるが、2キロの増減というのは測定誤差に毛の生えた程度のもの。仮に4キロ以上の減を本格的なマイナスとした場合、四半世紀を対象としても優勝した馬は2頭しかいない。昨年のブエナビスタ(4キロ減)と99年のスペシャルウィーク(16キロ減)だけである。

 4キロ以上減で出走した馬は25年間で79頭。うち1番人気6頭、3番人気以内14頭で優勝馬はブエナビスタだけだ(スペシャルウィークは4番人気)。仕上げ技術が向上していることや、そもそもいったん緩めること自体が少なくなっている影響だろう。

 ただ今年は、前走を12キロ増で使ったブエナビスタを筆頭に、人気どころでマイナス4キロ以上になってもおかしくない馬が何頭かいる。そもそも減って出てくる馬がいるのか、その結果はどうなるのか、注目したい。

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1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

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