先週発売になった今年の『
大穴血統辞典』(白夜書房新書)には、先週まで解説していた「ハイラップ指数」と、昨年登場した「高速上がり指数」が対になる指数として表記されている。
この「高速上がり指数」の中に、今作から新しく上向きの矢印と下向きの矢印が加えられた。今回はこの矢印の概念について解説しながら、種牡馬が本質的に持つ傾向というものを考えていきたいと思う。
高速上がり指数は、文字通り(芝レースでの)高速上がりのレースになったときの対応力を表している。
近代は速い馬場を遅い流れで展開する競馬が主流なので、上がりの高速化が際立っている。その時代の要請によって生まれたのが、高速上がり指数だ。
では、具体的にどんな種牡馬が高速上がりに強いのだろうか?
指数を見てみると、出走数の多いメジャー種牡馬では、サクラバクシンオーの60とディープインパクトの59が際だって高い。しかも2頭とも、末尾に上向きの矢印↑が付いている。
これは、高速上がりの中でも、上がりが速くなればなるほどパフォーマンスが上がることを意味しているので、究極に高速上がり向きの種牡馬ということになる。
たとえば、ディープインパクト産駒のマルセリーナは自身の上がりが34.2秒を切った3レースでは1着、3着、1着とすべて馬券圏内に入った。対して34.3秒を超えた4レースでは3着が1回あるだけで、あとはすべて4着以下に敗れている。
同じくディープインパクト産駒のトーセンラーも、自身の上がりが33秒台に突入した2レースはともに1着。34.1秒だったセントライト記念では2着。対して34.2秒を下回ったレースでは5回走って連対無し。500万条件でさえ、2回とも取りこぼしている。
500万を3着に負けた直後のきさらぎ賞で、上がり33.4秒という究極上がりを駆使して後の三冠馬オルフェーヴル以下を一蹴して初重賞勝ちをおさめたことは、まさに高速上がり指数の↑効果を如実に表したものといえるだろう。
ところで、よく競馬の解説で、「このレースは最速上がりを出した馬が連対する傾向にあるので、上がり勝負に強い馬を狙うべき」というような話を聞いたことはないだろうか?
これは、競馬の偏った一面しか見ていない。
仮に今回、最速上がりを出した馬が連対するような上がりの競馬になるとして、問題なのは果たして今回、該当馬が最速上がりを出せるかどうかが重要なのである。
いくら高速上がりで強くても、今回、その自慢の高速上がりを出せないようでは、何の意味もない。上がり勝負向きで、一番上がりを出す能力が高い馬でも、今回は最速上がりを出せませんでしたという場合も多い。
その理由は、主に2つ考えられる。
1つめは精神的な問題が発生している場合。つまりMの基本であるストレスだ。これがあると能力を出し切れないので、上がりに関しても、速い上がりを出せないケースは多い。
また道中気分良く走れなかったために、上がりを出す前にレースを投げ出してしまうケースもある。これはL系に多く、マンハッタンカフェ産駒などにはよく起きるパターンだ。
2つめは物理的に速い上がりを出すことができないケース(もちろん生き物にとって、物理的な事象が精神的な問題と完全に分離して存在することは不可能なのだが、あえてここでは物事を単純化して考えていく。ただ、最終的には指数も精神的な影響から作られていく部分が多いことに行き着いてしまうわけだが)。
この物理的な問題の解決に役に立つのが、高速上がり指数である。その中でも、特に矢印の存在だ。
(来週につづく)
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