天皇賞・秋は追い込み競馬になっただけに、上がり1、2、3位の馬が3着以内を独占した。
しかし、上がり上位馬が独占すると予想したとして、今まで高速上がりを連発した馬や上がり1位率の高い馬を買っていても当たらない。
緩い流れの差し競馬になると考えれば、高速上がりや最速上がりを何度も掲示しているペルーサなどが1着になるという読みも成立するが、ハイペースでの差し競馬になるという前提で予想しているなら、これは間違いだ。
ハイペースでの差し競馬なら、高速上がり適性が低く、最速上がり率の高くない差し馬が相対的には有利になる。したがって、ハイペースの差し競馬になるという読みなら、ペルーサではなくトーセンジョーダンが正解だ。
私も予想では「ハイペースになれば」とトーセンジョーダンに関しては解説したが、平均ペースで予想していたので、評価は下げていた。実際、平均ペースで流れていれば、トーセンジョーダンは今回勝てなかった。
トーセンジョーダンに関しては、洋芝適性が高いので高速時計はどうか? という見方があったが、それはまったくの間違いである。
むしろ、このレースが緩い流れの平凡な時計で決着していたら、トーセンジョーダンは苦しかった。体力が要求されにくく、1600mに近い質になりやすい東京2000mでの究極の上がり勝負になっては分が悪いからだ。レコードが出るような超ハイペースになったからこそ、高速上がり指数が低いことの価値が高まったのである。
加えて、ジャングルポケット産駒のハイラップ指数が52Lと、長距離でのハイペースで強いタイプだったことも、もちろん重要なポイントだったのは言うまでもないだろう。
指数で意外なのが、シンボリクリスエス産駒だ。
産駒にはサクセスブロッケンなど、パワー溢れるダート馬が多い。また、サクセスブロッケンと同じ初年度産駒のモンテクリスエスが芝3000m前後で活躍している。また、自身も有馬記念を連覇して、体力優先のイメージがあった。
ところが、シンボリクリスエス産駒のハイペース指数は43Sと低い。しかも末尾にSが付いている。43という低数字にSが付くということは、距離が短いときのハイペースなら悪くはないが、長距離でのハイペースはかなり苦手ということだ。
この数字から見えてくる産駒の特徴、ないし好走パターンとは何か?
たとえばモンテクリスエスが3着以内に入った今年春の阪神大賞典。
このレースは1、2、4着馬が3角3番手以内の先行馬が占めたという、前残りレースだった。実際、2番人気だった追い込み馬のオウケンブルースリは8着に惨敗している。
そんな中、勝ち馬よりも0.6秒も速い、上がり断トツ1位で先行決着に割って入り3着に好走したのがモンテクリスエスである。
先行決着のなかで、唯一追い込んできたのだから、たしかに強い内容だ。
ところが、その強いはずの馬が阪神大賞典前前後のレースではあっさり惨敗している(ダイヤモンドS・5着、ブリリアントS8着、目黒記念9着など)。
ここにシンボリクリスエス産駒の特徴が見えてくる。
(来週につづく)
※高速上がり指数…超高速の上がりに対応できるかを表す指数。50が平均。主に芝1200m以上でレースの上がりが34.0秒未満の決着時のデータによって指数化している。
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