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シンボリクリスエス産駒の傾向と対策(1)

  • 2011年11月16日(水) 18時00分
 シンボリクリスエス産駒は、パワーで押し切る単調な競馬を得意とするが、長距離での消耗戦を苦手とするという矛盾がある。モンテクリスエス以外にも、この傾向はいたる所に現れている。

 たとえば、アリゼオもスプリングSを緩い流れで勝った後に、延長でタフな競馬になった皐月賞を5着に敗れたが、平均ペースの毎日王冠を勝ち、ペース的には同じような流れだったが延長で体感的にタフな競馬になった天皇賞・秋では14着に敗れた。

 ミッキーチアフルもスローで流れた09年の常総Sでは2着したが、次の200m延長で流れもタフになった湾岸Sでは人気を裏切って連を外している。

 つまり、中長距離で前走より体感的にタフな流れになると、走るのを嫌がる性質があるわけだ。ただ、それ自体は種牡馬にはよくあることで、あえて取りあげるような問題ではない。

 シンボリクリスエス産駒がややこしいのは、同時に「揉まれ強くないので短縮より延長を好む」という傾向があることだ。前走より体力的にタフな競馬を嫌がるのに揉まれたくないということは、延長なのに(精神的な問題以上に)体力的に楽になる競馬を好むということになる。

 つまり、芝長距離においては延長で、かつかなり体力的に楽な、緩い競馬をピンポイントに好むということだ。

 このような競馬は、レース質がタフになりやすい前哨戦→本番という流れの中では発生しにくい。結果として、芝のクラシックディスタンスにおいては、単調な流れになりやすいトライアルホースになってしまうことが多いわけだ。

 アプレザンレーヴの場合も、単調な競馬だった青葉賞を勝った後、不良の消耗戦になったダービーは凡走している。

 しかも、これだけではシンボリクリスエス産駒の厄介さは終わらない。真に注意すべきは、低いながらハイラップ指数にSが付いているという点だ。つまり短距離のハイペースを意外にも好むのである。

 揉まれたくない体力タイプで中長距離向きでありながら、短距離のハイペースが合うというのは一体なんなのか?

 思えば、芝のGIで活躍した産駒は、サンカルロ、ストロングリターンという、芝1600m以下のカテゴリーである。

 ストロングリターンの安田記念は33.9秒という1600mとしてはかなりのハイペース。サンカルロもハイペースの1200mGIで2度馬券に絡んだ。

 この奇妙な現象の背後にあるものについて、次回は考えてみたい。

(来週につづく)

※ハイペース指数にSが付いている
ハイラップ指数とは、芝の速い流れに対応できかを数値化したもので平均は50。末尾にSがつと短距離のハイペースに強く、Lなら中距離のハイペースに強いことを表している。

※高速上がり指数…超高速の上がりに対応できるかを表す指数。50が平均。主に芝1200m以上でレースの上がりが34.0秒未満の決着時のデータによって指数化している。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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