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マイルCSで女王誕生!?

  • 2011年11月17日(木) 18時00分
 今週の栗東トレセンはすっかり秋らしくなり、ヒンヤリした肌寒さを感じましたね。いつの間にか、すっかり馬が一番過ごしやすい季節となったようです。そんな中で行われたマイルCSの追い切りは、陽気とは裏腹に熱気にムンムン。

 まずはグランプリボス。水曜の追い切りでは、僚馬のグランプリエンゼルを相手に坂路で併せを行いました。

 スタートからハードに攻め、早くも2ハロンあたりから積極的に仕掛けられるとグイッと加速。クビ差先着し貫禄の走りを見せました。タイムは51.2-13.3秒と自己ベストをマークしたんですよ。

負けられないと矢作調教師

 矢作先生は「今日はテンから飛ばして行けと指示しました。ラスト1ハロンは、もう少し踏ん張れたら…とは思いますが、レースに向けてはいい調整となりました」と笑みを浮かべて話してくれました。

 気合いを一発入れたことで、レースに向かう精神状態がしっかりできあがったようです。

 前走のスワンSでは、久々のレースだったとはいえ8着と、らしくない結果でしたが、先生は「あれで、いいガス抜きができました。放牧明けで本調子ではなかったですし、少し馬体が太かったですよね」と敗因もしっかり分析。負けの理由が分かっているだけに、今回特に不安はないようです。

 また先生は「(馬の状態が)上昇ムードになってきましたからね。ここは、強敵相手でも負けられません。勝って弾みを付け、香港に向かいたいと思っています」と気合いのコメントをしてくれました。

 強敵相手にどんな走りを見せてくれるか! 目が離せません。

 その「強敵」の第一候補リディルは、現在2連勝中。ただいま、絶好調です。

 小牧騎手が「この馬がいいレースをするときは、スッと折り合えて勝負どころで伸びてくれるんです。理想の形を馬が作ってくれるんですよ」と言うほどで、レースセンスの良さは折り紙付き。橋口先生も前走のスワンSは、そのセンスの良さを生かしての勝利だったと語ります。

 2歳ですでに頭角を現し期待されていましたが、その後左第1趾骨複骨折を発症。クラシックシーズンを棒に振ってしましました。現在も脚にはボルトが3本入ったままなんですよ。

 しかし、今の走りからは怪我の後遺症はまったく感じられません。先生が「よく、あそこから立ち直ってくれた」と感心するほどの回復を見せています。

ただいま絶好調のリディル

 今週は坂路で小牧騎手を背に追い切られ、タイムは51.5-12.9秒。先生は「じわじわとスタミナを奪う坂路で、力強く駆け上がってきた。駆けるというより、跳ね上がっているようなフォームだったよね」と満足そう。

 たしかに、四肢をしっかり使って走る力強い動きが印象的でした。

 また、「やんちゃな馬だったけど、落ち着いてきて体重も減らなくなってきたよ。それに、馬体の芯がしっかりしてきて、たくましくなってきたよ」を先生。

 馬体がいいのはもちろんですが、僕がリディルから感じるのは品のよさ。その話を先生にすると「そうだろう〜」と我が意を得たりの笑顔。

「母父のダンシングブレーヴの感じがよく出ているんだよ。あっ、当然だけど能力もあるよ。いつGIを勝ってもおかしくないぐらいだね」

 なるほど、リディルの上品さは、「躍動する勇者」と言われたお祖父さんから受け継いだものだったんですね。

 ちなみに、弟のクラレントも今週東スポ杯2歳Sに出走予定。

 こちらは先生曰く、「同じ栗毛だし、見た目はよく似ているんだけど、中身はまったく違うね。兄は厩舎に来た当初からやんちゃだったけど、弟は大人しくて手のかからないタイプ。まだまだ底知れない部分があるので、楽しみも大きいよ。ダービー向きじゃないかって感じているんだ」とのことでした。

 ひょっとしたら、土日で重賞の兄弟制覇となるかもしれないですね。これは楽しみです!

 さて、好メンバー揃うなか、僕が狙っているのは3歳牝馬のキョウワジャンヌ。

 飯田騎手は「瞬発力は衰えていませんよ。32秒台の脚をレースで使っても疲れが出ません。これには感心しますね。それに、レースでの課題も、ひとつずつクリアしてきました」とのことで、不安はないと強気にコメント。

 また、担当の橋口厩務員は「脚が長くてまとまった馬体をしていますね。それに、筋肉が柔らかいので疲れにくく、コズミも出たことがありません」と話してくれました。

 あの秋華賞のあとも、なんでもなかったなんてタフな馬ですよね。むしろ、橋口さんは「秋華賞で戦った相手が、この馬にいい力を与えてくれました」と、あの激戦に感謝しているんですよ!

見かけによらずタフ娘、キョウワジャンヌ

 愛情たっぷりに橋口さんにシャワーをしてもらっていたジャンヌの馬体は、均整がとれていて、いかにもマイル向きという雰囲気でした。新マイル女王誕生に期待しています!

 もう1頭、気になっているのがエーシンフォワード。

 最終追いには岩田騎手が跨り、しっかり気合い注入。平田助手も「ピリッとしてきた」と言います。

 でも、馬房から顔を出す姿は、相変わらず可愛いんですよ。また、平田さんが「この馬、素直で優しい性格なんで、レースでも寂しがったりしちゃうんですよね」というぐらい、「いいやつ」なんです。

 しかし、「いいやつ」はしばらく返上。「この時期が一番調子がいい」(平田助手)ということですから、ここはチャンスをつかんでもらいたいところです。実力はありますからね!

 それにしても、今週出走する外国馬も油断できない相手。頑張れ日本馬! そう声援を送りに、紅葉が美しくなった京都競馬場へ行こうと思っています。

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1977年8月2日、大阪府生まれ。96年3月に中尾正厩舎所属でデビュー。同期に福永祐一、和田竜二らがいる。96年3月10日、タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビューからの約5か月で12勝をマーク。しかし同年8月、レース中に落馬事故を起こし意識不明に。その後、奇跡的な回復をみせて復帰。03年には中山GJでビッグテーストに騎乗しGIを制覇をする。 04年8月28日、小倉競馬場で行われた豊国JSで再び落馬。レース復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は、栗東トレセンを中心に、精力的な取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)にて『常石勝義のお馬塾』(毎週土曜日9:45〜)に出演中。

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