やはり、シンボリクリスエス産駒であるストロングリターンが今年の安田記念で2着に好走したのは、、2走前が準OPで鮮度が満タンだったことが大きい。
鮮度があれば、多少厳しい状態でも精神的に耐えられるのはいつも書いている通りだ。しかも、同馬はマイルの重賞そのものが安田記念が初めて。生涯鮮度が極めて高い状態である。
また、前走は京王杯スプリングS。もともとこのレースは安田記念の前哨戦で、ここを好走するとストレスが蓄積するため、本番で凡走する馬が過去に何度も出ている。それでもストロングリターンが走れたのは、生涯鮮度の高さのおかげに他ならない。
直近ストレスが強いレースで好走した馬が本番も走る場合、ほとんどがこの生涯鮮度を満たしたケースになる。マイルCSのエイシンアポロンも、ストレス満載の富士S勝ち馬だったが、ストロングリターン同様に古馬のマイル重賞は今回が初めてという、極めて高い生涯鮮度があったのはもちろん偶然ではない。
それに加えて、ストロングリターンの場合は「バウンド延長」だった。延長で前走より息の入りを楽にしながら、2走前に1800mを走ることでスタミナを身につけたステップだったのである。
このように、トップクラスのハイペースをシンボリクリスエス産駒が好走するには、何かしらの鮮度とショックがほしい。それさえあれば、シンボリクリスエス産駒最大の問題である精神的障害を乗り越えることが出来るので、もともとあるハイラップ指数のSという、身体的なハイペースに対する優位性を発揮できるわけだ。
もちろん相手が見下ろせるレベルなら、このようなショックは必要ないことも多いが、自分と近いレベルの相手と走るには、精神的な問題のクリアは、特に非C系には重要なポイントになってくる。
ところで、これらは芝での傾向になる。ダート戦になると、タイプそのものもある程度変わっていく点には注意したい。
つまり、ダノンカモンが生涯ストレスがある状態にもかかわらず、連続好走で、GI南部杯を2着したのも、芝ではあまり見られないパターンと言える。
ただ、ダートでも本質的な性格が大きく変わるということではない。
シンボリクリスエス産駒の場合、ダートにおいては一回り、精神的にも肉体的にもタフになる傾向があるが、それは一回りタフになったということであって、方向性そのものが目に見えて変わったわけではないのだ。
例えば、サクセスブロッケンは初の古馬マイルGIになったフェブラリーSでは、短縮で6番人気1着になったものの、生涯ストレスを重ねた翌年の同レースは、2番人気で3着に敗れることになったのだ(前年は3着だった前走が1着だったので、直近ストレスがきつかったこともあるが)。
このダートでの好凡走のパターンは、芝でのシンボリクリスエス産駒と、心身耐久力の容量は変わるが、構造自体に決定的と言えるほどの大きな変化はないのである。
【12月の本コラムは特別編でお届けします!】
次回の当コラムは、10月21日に発売された新刊「
ポケット版 大穴血統辞典 2012-2013」を使った実践編を掲載します。内容は今井雅宏氏と新刊担当編集者による阪神JF・朝日杯FSの展望となります。
なお、12/14(水)は通常の連載に戻り、12/21(水)は有馬記念、12/28(水)は東西金杯の展望対談を掲載予定です。ご期待ください。
※高速上がり指数
超高速の上がりに対応できるかを表す指数。50が平均。主に芝1200m以上でレースの上がりが34.0秒未満の決着時のデータによって指数化している。
※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Strugge」の頭文字から。
C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。
L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。 Lの由来は「Light」の頭文字から。
M(まとまり系)
ひとつのタイプに偏らず、すべての要素を持ち、全体的にまとまっている馬。そのため、大きな特徴はないが、どんな条件も適度にこなせる。
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