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ハーツクライ産駒の傾向と対策(1)

  • 2011年12月14日(水) 18時00分
 今週は、昨年デビューしたハーツクライ産駒について考えてみたい。

 初年度産駒は特別な生命力を持っているので、それをしてタイプを論じるのは多少危険が伴う点には注意が必要だが、産駒も増えてきたので、今のうちに押さえるべきポイントは押さえておきたい。

 ハーツクライの現役時代は、体力とパワーに富み、闘う意欲も強いものがあったが、サンデーサイレンス産駒としては精神コントロールが難しく、比較的安定感のない方だった。その為、精神コントロールを付けるべく、矯めるだけ矯めての直線競馬というスタイルを取っていたわけだが、05年の有馬記念では突如前に行く位置取りショックを仕掛け、断然人気のディープインパクトを降して初GIタイトルを手にしたのだった。

 前に行く位置取りショックが好きなルメール騎乗ということも大きかったが、ハーツクライ自体が、そういうショック適性が高かったのは間違いないだろう。

 基本的に精神コントロールの難しい馬は、位置取りショックを好むものである。

 そこで種牡馬になってからのハーツクライだが、やはり体力とパワーが豊富で、闘う意欲もまずまずと現役自体に似た産駒を出している。加えて精神コントロールが難しいところも同様だ。

 例えば代表産駒のウインバリアシオンは最後方からの追い込みで菊花賞を連対している。これは安藤勝が同馬の精神をコントロールするには極端な戦術が合うと判断したことを意味する。

 続くJCでは4角大捲りという競馬を披露した。荒っぽい競馬と思われるかもしれないが、同馬の精神をコントロールするには、こういうメリハリの付いた競馬がベストだと判断したからだ。

 ただ、ここ一番で、前作の血統辞典で予測を書いたように、ルメールのようなタイプの騎手が乗って前に行く位置取りショックを嵌める可能性があるので注意したい。

 実際、位置取りショックは父同様によく嵌まっている。

 重賞でも、昨年リフトザウイングスが東スポ杯で連対したときが前走3角2番手から、今回3角最後方16番手からの追い込みという極端な位置取りショックだったし、ジャスタウェイが新潟2歳Sで連対したときも、前走先行から今回追い込みという極端な位置取りショックだった。

 精神コントロールが難しいので追い込みに徹している馬を先行の位置取りショックで嵌めるというパターンの場合は、ハーツクライ自身の有馬記念がそうであったように、やはり外国人騎乗のときに特に要注意だ。

 外国人騎手は、コントロールの難しい馬を、先行させて無理矢理持たせてしまうという技術に長けているからである。

 ギュスターヴクライも5戦連続2,3着で勝ちきれなかったが、ウィリアムズが前走追い込みから、いきなり2番手先行の位置取りショックを掛けると、みるみるうちに引き離して、0.9秒も千切って勝ってしまった。

 一体、今までの勝ちきれない競馬は何だったんだろう?という快勝だったわけだが、これが精神コントロールの難しいタイプにおける位置取りショックの破壊力になる。

 外人騎手への乗り替わりに関わらず、日本人騎手でも、この形には注意した方がよいだろう。


【12月の本コラムは特別編でお届けします!】
12/21(水)は有馬記念、12/28(水)は東西金杯の展望対談を掲載予定です。ご期待ください。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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