川崎記念(1月25日 川崎 サラ4歳以上 定量57kg JpnI 2000m)
「川崎記念」は、統一GIに移行して16年。大井「帝王賞」「東京大賞典」と較べイメージこそ地味だが、年を重ねるごとに“チャンピオンレース”らしい風格を増している。歴代優勝馬をずらり並べて、その顔ぶれが豪華かつ納得がいくこと。黎明期のホクトベガ(平成8〜9年連覇)、アブクマポーロ(10〜11年連覇)に始まり、レギュラーメンバー(13年)、アジュディミツオー(18年)、ヴァーミリアン(19・22年)、カネヒキリ(21年)、ほぼ例外なく、時代のダート最強馬が制してきた。とりわけここ5年は、すべて1番人気馬の優勝。強いものは強い――穴党ファンには少し味気ないけれど、GIらしいGI、そういう意味では最も競馬の原点に近いだろう。
さて今年、スマートファルコン登場。統一G8連勝中(通算19勝)はもちろん大きな話題だが、同馬の場合、今回もう一つ記録がかかる。ここを無事クリアなら南関東4場完全制覇、グランドスラム達成ということ。大井(東京大賞典・帝王賞・JBCクラシック)、船橋(JBCクラシック・ダイオライト記念)、浦和(浦和記念・さきたま杯)。この記録はこれまで、ホクトベガ、ヴァーミリアン、2頭しかなしえていない。傑出した能力は当然として、同時にタフな体質と精神力が要求される。ただごく普通にイメージして、川崎記念(左回り・二千百)は今のファルコンに最も合う。自然流の先行、そこから徐々にピッチを上げ勝負どころで引き離す――。改めてふり返れば同馬は、3歳時皐月賞(中山)を最後にJRAの馬場を走っていない。しかも昨春からは11戦連続南関東で力走した。だからだと思う。記者にとってのファルコン。JRA馬というより、当初から地方側ヒーローだったかのような同朋意識が実はある。
(1)…人気馬を信頼。
1番人気〔6-2-0-2〕。それも過去8年に遡って連対を外していない。2番人気〔2-3-2-3〕、3番人気〔1-5-2-2〕もきわめて優秀。
(2)…JRA優勢。
JRA7勝、2着6。船橋=2勝、2着4も悪くないが、これはすべてアジュディミツオー、フリオーソの健闘による。川崎1勝は16年エスプリシーズ。
(3)…熟年・壮年。
6歳=3勝、?着4と一歩リードだが、5歳、7歳も3勝ずつでほぼ互角。前年東京大賞典馬が出てくるとやはり強く(回避例多い)、過去10年3頭=2、1、1着。
(4)…先行型
逃げ=7、先行=7、差し=4、追込=2。実力馬が先行、そのまま押し切る形が多い。武豊騎手=2勝、2着2、3着1。地方Gでみせる“腕”については再三書いた。
※データ推奨馬
◎スマートファルコン…力関係はもちろん、データ面でも非の打ちどころがまったくない。円熟期の7歳、JRA関西(栗東)所属。前年東京大賞典馬で、武豊Jが騎乗する。自らレースを先導して時計勝負。
☆ ☆
◎スマートファルコン 武豊
○フリオーソ 戸崎
▲ランフォルセ 横山典
△ボランタス 山崎誠
△ニホンピロアワーズ 酒井学
△キングスエンブレム 岩田
△マイネルアワグラス 柴田大
ロードキャニオン 服部茂
グランシュバリエ 本橋
ベルモントサーガ 坂井
昨暮れ「東京大賞典」、記者はスマートファルコンを疑って失敗した。出走予定だった「JCダート」回避(JBC力走の疲労残りとコメントされた)の経緯から、万全ではないと判断したため。しかし結果的に底力で押し切った。3kg増、気合ひと息にみえたパドックからも、おそらく8〜9分ではあっただろう。それでもいざ実戦、自分の形に持ち込んでしまえば、最後あれだけの闘志をふり絞る。実際、当時の馬場で二千2分01秒8は悪くない。むしろワンダーアキュートが大好走、大駆けを演じたこと。いずれにせよファルコンの凄さは、その並み外れた基礎体力、さらに驚異的な回復力だと実感した。
前述通り川崎二千百は、同馬にとって条件ベストのイメージがある。今回はレース後すぐに乗り込み再開、状態も再び100%に近いだろう。好敵手・フリオーソは8か月半の休み明け。以下伏兵陣は、実績、キャリア、どう考えても大きな差がある。統一G20勝目、恐るべき記録を、どんなパフォーマンスとともに達成するか。馬場状態しだいでレコードの夢まで浮かぶ。
そのフリオーソ。同馬は長休明け自体経験がなく、当初△程度の予想を考えたが、追い切りVTRを見て気持ちが変わった。寮馬ルクレルク(A1)と併せ、直線GOサインと同時に鋭い伸び。身のこなしが柔らかく終始リラックスした雰囲気で、あるいは“思いがけない充電”になったのかもしれない。GI6勝、底力は言わずもがな。対ファルコンも、一昨年「日本テレビ盃」で圧勝実績がある。無理せず折り合って2番手…が、おそらく今回の作戦だろう。人気落ちとすれば逆に馬券的な妙味も出る。
ファルコンを除くJRA4頭は一長一短。新鮮味でランフォルセを▲にとった。中〜長距離志向のダート8勝、とりわけ4走前「東海S」、ワンダーアキュートに3/4差2着は価値がある。前走「名古屋GP」を制したニホンピロアワーズ、ヴァーミリアンの半弟キングスエンブレムも圏内だが、前者は強敵相手の実績がないこと、後者は精神面で安定性に欠けること。今回の結果しだいで評価が動く。マイネルアワグラスはダイオライト記念2着2度のステイヤーだが、近況は新勢力に押され気味。それなら同じ8歳でもボランタスか。前走「浦和記念」、シビルウォー(JBC3着)に競り勝ってグレードアップ。走り慣れた地元二千百を、気楽に乗れる有利さはやはり大きい。