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16番人気ケンブリッジエルを何故狙えたのか

  • 2012年02月01日(水) 18時00分
 前回の続きを書く予定だったが、今週Mの教科書的な馬券が重賞で連発したので、記憶の新しいうちに振り返っておきたいと思う。

 まずは土曜のシルクロードS。これは断然人気のロードカナロアがいて厄介なレースだった。M的にはレース間隔が8週開いていて疲れが薄れ、また生涯レース数が少ないので蓄積ストレスも少ない。さらには速い上がりの差し競馬向きなので京都も合う。

 私の場合、断然人気の馬を切る理由がないレースは、予想していて一番テンションが落ちる。しかし、ここで闘う意欲を失っているようでは、予想人として失格だろう。多頭数で、他の人気馬は蓄積ストレスが多い。つまり、ロードカナロア以外は何が起きてもおかしくないレースなのだ。

 そこで、ロードカナロアと同点で本命にしたのがケンブリッジエルだった。前走は格下の準OP新春Sで4着凡走。しかもハンデ戦とはいえ、2走前のアンコールSは今回と同斤の53キロで9着に惨敗。重賞レベルアップする今回はまったく見込みがないと思われて、最低人気の16番人気。単勝は263倍に放置されていた馬だ。

 ただ、その人気薄の理由こそが、Mでは買うべきポイントに他ならなかった。まず、準OPで前走4着に凡走していた点。つまりまったく疲れがない。しかも、今回は格上挑戦でメンバーも一新。精神的にフレッシュな状態で競馬が出来るという、プラスとしてMでは捉えられる材料だ。

 次に2走前にハンデ戦で今回と同じ斤量でOP特別を惨敗した点。これもMではまったくマイナス材料にならない。

 2走前は3走前と同距離の1200mだったのだ。今回は前走1400mで短縮の1200mになる。もともとケンブリッジエルは掛かりやすい馬なので、この短縮は大きなプラス材料だ。したがって、短縮を活かせるハイペースになれば、同じ1200mでも同距離だった2走前の9着より大きく着順を上げる可能性が高い。

 さらに、2走前は3走前に得意のハイペースにハマまって10番人気で3着に激走した直後だった。つまりストレスが絶大だ。それで9着はむしろ善戦だろう。ストレスの無い今回は着順を上げるのは間違いない。

 以上からロードカナロアと同点でこちらを本命に予想し、3番手には格上げで鮮度のあるダノンフェアリー、4番手に前残りの流れになったときに備えてエーシンダックマンとした。

 レースは予想外にスローに近い流れ。速い上がりの差し競馬向きのロードカナロアが、嬉々として走って1着。短縮向きのケンブリッジエルは道中緩い流れに掛かってしまった。しかし、そこは格上げの鮮度と短縮を活かして何とか差し込んできた。楽なペースの単騎逃げだったエーシンダックマンに僅かに及ばなかったが、ハイペースでなくても普通の1200mの流れになっていたならエーシンダックマンは楽に差し切っていただろう。

 ただ3着でも、複勝21倍、3連複289倍の高配当だ。相手が1、2番人気だったので最高50倍以上付く予定の複勝は最低配当になってしまったが、それでも予想の2点目で3連複289倍的中だから、美味しい話だ。

 このように、人気薄激走には必ずM的な理由がある。特に重賞の場合は各馬がある程度真面目に走っているので、人気薄になればなるほど理由無くしては走らないのだ。これが、「Mは荒れれば荒れるほど論理的に当てられる」という現象に他ならない。

 もちろん、人気薄ばかりがMに従うわけではない。翌日曜の京都牝馬Sでは前日と一転、人気の一角2番人気ドナウブルーを本命に予想し、同じように3連複を2点目で当てたのだった。

 理由はほぼ同じ。1000万勝ちからの格上挑戦で鮮度満載だ。しかも短縮で、前走は先行。今回は陣営も「差しに回る」と公言している。これはMでは、短縮を利用した「意識的な位置取りショック」と呼んで、かなりハマりやすいショックになる。

 あとは馬群を割れる鮮度状態の内枠なので、当日内目も伸びる馬場になっていれば完成だ。相手筆頭には前走短縮で激走したアスカトップレディを指名した。

「あれ?」と小首をかしげた読者も多いだろう。「前走短縮激走のストレスは無いのか?」ということだ。
(来週につづく)

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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