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デュランダル産駒、芝とダートの短縮は正反対(1)

  • 2012年02月15日(水) 18時00分
 今週はデュランダル産駒について考えてみたい。

 種牡馬デビューから3世代産駒が登場し、徐々にその特徴が明らかになってきた。その中には、距離変更や疲労問題などに関して、なかなか馬券的に面白いパターンが見られるので、その辺りを中心に分析していこうと思う。

 デュランダル自身は芝1200m〜1600mで活躍し、短距離におけるサンデーサイレンスの代表産駒となった。そのイメージから、貴重な短距離系のサンデーサイレンス血統として注目されたが、産駒の初GI勝ちはエリンコートのオークス(芝2400m)だった。

 もちろん、クラシック時期の牝馬は自身の距離適性より長い距離で走るものであり、またエアラフォンなどが短距離で走っているように長距離向きというわけでもない。ただ、短距離向きの種牡馬でないことも事実だ。

 実際、芝1000mでは27回出走してまだ勝ち星がない。また芝1200mも214戦して6勝止まり、単勝回収率は32円しかない。しかし、複勝回収率は1000mが161円、1200mが88円となかなか高い。

 つまり、崩れないが、1200m以下だとなかなか突き抜けないのだ。この性質は、距離変更ショックに象徴される。芝短縮の単勝回収率が30円以下と不気味なほど伸びていないのだ(複勝回収率も50円に満たない)。特に1600m以下の短距離での短縮はなかなか勝ちきれない。前走よりペースアップする流れに対して、芝では対応力が低いということだ(ちなみにダートでは、芝血統らしく短縮が走りまくっているので注意)。

 では、ハイペースそのものの対応が苦手なのかというとそうでもないのが、デュランダル産駒の面白いところで、拙著『大穴血統辞典』(白夜書房新書)ではハイラップ指数52とまずまずの数字を出している。これは一体何を意味するのだろう?

 ハイペースはこなすのに短縮に弱い血統で多いパターンは、揉まれ弱いタイプになる。流れ激化で、前走より揉まれ込むと嫌気が差して投げ出すタイプだ。

 ただ、デュランダル産駒はそれほど揉まれ弱いタイプでもない。決して揉まれ強くもないが、短縮失敗の主要因に挙げられるほど、致命的に揉まれ弱いわけではない。 では、何が芝への短縮を失敗させるのか?

 その主要因は、ハイペース適性そのものは高いが、スイッチが入りにくい点にある。スピードに乗る反応が遅いのだ。

 一般的な競馬常識からすれば、これはある種当たり前のことだろう。前走より距離が短くなって流れが速くなったら、対応出来ない可能性が高くなるというわけだ。「1回同じ距離を使って、慣れさせた方がいい」などという、妙な論理が成り立つ根拠でもある。しかし、それがおかしな話だということは、この連載を毎回読んでいる読者なら、幾度も繰り返し記載された例から、そして何より毎週の競馬からも、充分に分かっていると思う。

「慣れることより飽きるスピードの方が早い」というのが、サラブレッドの基本である。もちろん慣れることも重要だが、慣れさせるには、飽きさせずに慣れさせることが重要になる。また、慣れさせるために、ストレスを与えてはいけない。

 そういう意味では、デュランダル産駒は異端だ。あまりにスイッチの入りが遅いので、短縮鮮度より激流への対応の遅れが出る確率の方がかなり上回っているわけだ。

 では、来週は実際のレースでそれを見てみようと思う。

(来週につづく)

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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