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念願の王座へ、その秘策とは?

  • 2012年02月16日(木) 18時00分
 今年最初のGI、フェブラリーSが今週末に迫りました! メンバーは実力伯仲! 楽しみなレースになりそうです。

 まず、昨年の覇者トランセンド。ドバイ遠征に弾みを付けるためにも、ここは負けられない一戦です。

 今週は朝一番に坂路で追い切り、あまり馬場状態がよくないなか54.0-13.5秒の時計を出し動きも上々。安田先生も「十分仕上がっているよ。時計より、動きが大事だからね。のびのびしたフットワークで加速もよく、スピード感のある走りだった」と満足そうでした。

トランセンドは全身筋肉の固まりのよう

トランセンドは全身筋肉の固まりのよう

 追い切りを済ませた後は、山下助手がていねいにトランセンドの汗を流していましたよ。洗い場で見るトランセンドの馬体は、肩に無駄な脂肪がまったくなく走るための筋肉しか付いていませんし、全身筋肉隆々。それに、前脚が立派で爪が立っているのは、いいですね〜。

「この馬の筋肉は、ボディビルダーのように作り上げていく筋肉じゃないんですよ。走るための、アスリートとしての筋肉が自然に付いているんです。今、昨年の一番いいときの状態までデキが戻っています」と山下助手。

 山下さん自身が平常心なのも、素晴らしいなと思いましたね。これってレース前、特にGIのような大勝負の前は大事なことなんです。

 その大勝負に向けて、どんな調整をしてきたかを安田先生にうかがいました。

「年明け早々から乗り込みを始めました。1月半ばから徐々にピッチを上げ、坂路で51.8秒の自己ベストを更新するまでになったんです(1/18)。その後はポリトラックで調整し、先週にはポリで6F74秒を切る時計を出しています。今年で6歳になるけど、ちょうど油が乗った働き盛りの時期って感じかな」(安田師)

 そう話してくれたあと、小さくVサインをするお茶目なところがステキです。馬は仕上がり、陣営は臨戦態勢ながらも平常心。まさに、理想の状態です。これは、史上初のフェブラリーS連覇の可能性も!? 楽しみです。

 トランセンドの好敵手、エスポワールシチーは王座奪還に燃えています。今回は怪我で乗れない佐藤哲三騎手に替わり、武豊騎手が騎乗。ユタカさんも「こんな強い馬に巡り会えて幸せ。乗るからにはベストを尽くす」と気合いが入っています。

エスポワールシチーは2週連続でユタカさんが乗っての仕上げ

エスポワールシチーは2週連続でユタカさんが乗っての仕上げ

「今週はCWを長めで前半ゆったり、終いキツ目でやったんだけど、手応えはよかったよ。乗り手の指示にも素直に反応するし、バランスもいいから、折り合いよく軽やかな脚裁きはできたよ。一緒にレースをしたことがある馬だから、いいところも、悪いところも少しは分かる。その辺りもよく考えて、レーススタイルを作っていきたいね。闘争心はあるし、年齢を感じさせないよ」そうコメントしたユタカさん。かなり、好感触を得ているようです。

そうそう、先週の京都記念を僕は4コーナーから見ていたんですが、トレイルブレイザーは4コーナーを鋭角的に回っていたんですよ。距離のロスもなく狭い隙間に突っ込んでいきました。その動きができる馬もスゴイと思いましたが、あの手綱捌きができるユタカさんの技術にも驚きましたね。

 そのユタカさんの騎乗で、久々のGI制覇なるか!? これは、注目でしょう。

ワンダーアキュート、善戦マンの名は今回で返上

ワンダーアキュート、善戦マンの名は今回で返上

さて、実力では前出の2頭に負けてはいないと思われるワンダーアキュート。しかし、ジャパンCダート、東京大賞典と2着続き。
相棒の和田騎手は「前走ではスマートファルコンにあそこまで迫って、あと一歩で届かなかった」と悔しさをにじませながら、「それでも力の証明はできた」とキッパリ。

「今回は先行馬が多いので、そこにどう滑り込むかが鍵。でも、馬込みも平気だし注文の付かない馬だから、どんな流れの競馬にも対応できる。まあ…あとは運かな」(和田騎手)

 今回も前走に引き続きホライゾネット(網状のカップで目を覆う馬具)を使う予定で、さらに「芝からのスタートはいい」と和田騎手。勝利に向けて着々と作戦を練っているようですが、「これ以上は、常ちゃんでも言えないな」とのことでした。

 でも、自信があるのは、その口調からもわかりましたね。それもそのはず、現在のワンダーアキュートは絶好調。クビが太くて、バネのありそうな馬体をしています。

 佐藤正先生は「どんな競馬もできるようになったのは、力を付けてきた証拠。入れ込みのキツい馬だが、1600mならスタートさえよければ大丈夫。東京への輸送は武蔵野Sでも経験しているので平気。強気でいきますよ」と話してくれました。

 余談ですが、12年前の辰年。和田騎手はテイエムオペラオーでGI5勝をするなど大活躍。ひょっとしたら、今年もブレイク必至!? 頑張ってほしいですね。
知将・矢作師は、新たな挑戦に期待をふくらませる

知将・矢作師は、新たな挑戦に期待をふくらませる

そんな強豪揃うなか、僕が期待しているのはグランプリボス。前走の阪神Cで2着となり、復調の兆しを見せています。また、今回は初のダート挑戦。しかし、矢作先生は「パワーのある馬で、血統的にもダートでの活躍馬が多い」と意に介していません。

 昨日は坂路でオセアニアボスと併せ、2馬身ほど後方から追いかける形で最後はハナ差ほど先着。先生は「重馬場でよく動いたよ。ゴールドアリュールに似た走りをする」と嬉しそう。

 今回は内田博幸騎手の手綱での出走ですし、初めてづくし。どんなレースがみられるか、ワクワクしますね。

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1977年8月2日、大阪府生まれ。96年3月に中尾正厩舎所属でデビュー。同期に福永祐一、和田竜二らがいる。96年3月10日、タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビューからの約5か月で12勝をマーク。しかし同年8月、レース中に落馬事故を起こし意識不明に。その後、奇跡的な回復をみせて復帰。03年には中山GJでビッグテーストに騎乗しGIを制覇をする。 04年8月28日、小倉競馬場で行われた豊国JSで再び落馬。レース復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は、栗東トレセンを中心に、精力的な取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)にて『常石勝義のお馬塾』(毎週土曜日9:45〜)に出演中。

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