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ディープ産駒、重賞2勝目なるか

  • 2012年03月10日(土) 12時00分
 先週、ジョワドヴィーヴルがチューリップ賞でよもやの3着に敗れた。ウオッカやダイワスカーレット、そしてジョワドの姉のブエナビスタなど、男まさりの強さを見せる牝馬がいて当たり前という状況がつづいていたせいか、この敗戦はショッキングな出来事として受けとめられた。

 しかし、これが例えば叩き3戦目で、強い追い切りをこなしながらも体が増え、道中揉まれることなく折り合ったのに弾けなかった……となれば心配だが、年明け初戦のトライアルだったのだから、負けて課題が浮き彫りになって、むしろよかったのではないか。

 ジョワドだけではなく、翌日の弥生賞ではアダムスピークが8着、中日新聞杯ではダノンバラードが3着と、1番人気になったディープインパクト産駒が重賞で立てつづけに敗れた。それにより、ディープインパクト産駒にいまだ重賞2勝馬がいないという「異常事態」がつづくことになった。

 初年度産駒のマルセリーナ(桜花賞)、リアルインパクト(安田記念)、そして2年目の産駒のジョワドヴィーヴル(阪神JF)と、この2世代だけで3頭ものGI勝ち馬を出し、2011年にリーディングサイヤーランキング2位になったスーパーサイヤーの産駒が重賞を2勝できていないのだから、「異常事態」と言っても大げさではないだろう。

 ディープの初年度産駒がデビューした一昨年の時点で、「一戦ごとに完全燃焼するタイプが多いせいか、連勝できない馬が多い」という声は聞こえていた。

 私見だが、同じ勝つにしても「次」のことを考えた乗り方をする「武豊タイプ」の騎手(あるいは武騎手自身)よりも、とにかくその一戦での勝利を優先させる外国人騎手や似たタイプの騎手が多くディープ産駒に乗っていることも影響しているのではないか。誤解のないよう加えると、競馬は勝ってナンボなのだから、後者のタイプの騎手が悪いと言うつもりはないし、騎手をその2種類だけに分けて評価しているわけでももちろんない。

 今のところ、特に初年度産駒ではマイルぐらいがベストと思われる馬が多いことの理由に関しても思うところがあるのだが、それは2年目の産駒の走りをもうしばらく観察したうえで書いてみたい。

 今週行われるふたつの重賞で、重賞2勝目がかかるディープ産駒が出走するのは中山牝馬Sのドナウブルーだけだ。鞍上はC・デムーロ騎手。この馬が勝てば、「外国人騎手や似たタイプの騎手が……」と云々した私は恥をかくことになるのだが、まあ、モノを書くことは恥をかくことなのだから、それは甘んじて受け入れたい。外国人騎手とはいっても、この馬の場合、2走前が兄のM・デムーロ騎手で、前走もC・デムーロ騎手が乗り、ここまで2連勝しているので、「その一戦での勝利を最優先」というパターンではないのかもしれない。

 中山牝馬Sが行われるのは2012年3月11日。東日本大震災からちょうど1年の、節目の日である。

 前日、10日の土曜日は弟の結婚式が徳島で行われるため競馬場には行けないが、11日は中山競馬場に行く予定である。アメリカで生産者として活躍している吉田直哉さんが呼びかけている「ハッツオフ計画」として、海外の競馬事業者から提供された帽子の販売が行われるので、私も顔を出すつもりだ。

 ハッツオフにからめて、帽子に関係のある名前の出走馬がいないか中山牝馬Sの馬柱を眺めていると、「ハット」トリックを管理した角居勝彦厩舎のオールザットジャズがいた。せっかくだから、この馬とドナウブルーの馬連とワイドでも買ってみようと思う。

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 先日当サイトで実施した拙著のプレゼントに多数の応募をいただき、ありがとうございました。当欄に対するみなさんの声も、嬉しく拝読しました。多謝(ターシャ)です。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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